三井長編
□conte 18
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仕事を終え、紫帆はまっすぐ家に帰った。ここのところ転勤者や新入社員の歓送迎会が立て込んでいたし、先週は三井と飲んで連れて帰ってもらう有様。20時に家にいる金曜日なんて久しぶりじゃないだろうか。
お風呂にもゆっくり浸かり、リビングに行くと、桜輔がテレビを陣取っていた。あの日から、今まで通りに部活も出ているらしい。
しかも今もバスケの試合を熱心に見ている。三井の(暴露の)効果には驚くことばかりだ。
「もう3年なんだし、勉強しなくていいの?」
「これ見てテンションあげてからやるんだよっ」
湘北の赤のユニフォームの試合だが、桜輔たちのものではない。でもチラッと目に入った赤い頭ですぐにわかった。
「花道くんだ。今も短髪だけど、すごいね、この坊主頭!」
しかもこれは宮城ではないか? そして……三井もいた。明らかに少年っぽさが残っている。
「これが噂の山王戦だよ。見せてなかったっけ。シビれるぜ?」
「山王」今までに何度も桜輔の口から聞いたことがあった。この高校バスケ界の王者と言われた山王を倒したのが三井たちだと、誇らしげに語っていたのも覚えている。
へえ〜、と水を片手にそのままソファーに座り見ていると、ふとスタンドが映ったときに、堀田が目に入った。
今とそんなに変わらない、が、リーゼントで変な旗を振っているので目立った。その文字までは読み取れなかったが。
2点リードで前半が終わった。あまり詳しくないながらも、どうみても格上相手に湘北が大健闘しているのはわかった。前半の怒涛のスリーポイント。
「三井さん、2年もバスケしてなかったとは思えないね……」
ポツリと言った紫帆の言葉に、桜輔は驚いた。
「姉貴、知ってんの? 三井さんのブランク」
「え? あ、うん、聞いた……」
「あの乱闘事件も?」
ああ、歯を折ったって件かなと紫帆は思い、頷いた。
桜輔はさらに目を見開いた。姉はいつ三井から聞いたのだろう。いつの間にそんなに親しくなったのか? それにしても、三井はなんであの話を姉にしたのだろう……
そんなことを考えていると、画面が切り替わり、後半が始まった。そしてあっという間に点差が開いていく。
「……この試合、勝ったんだよね?」
「ああ、ネタバレするようだけど。しかも普通は20点差で勝負が決まるって言われてんだ」
と言われたそばから、20点差がついた。そして明らかに三井の動きが鈍くなってきている。
「このころの三井さん、一試合走りきるほどの体力がなかったってさ。オレ、ケガしたって話は聞いてたから、てっきりそのせいでだと思ってたよ……」
「そっか」