鬼徹【novel】

□カミサマの思慕 白鬼
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『神様は幸せだ。』

今も昔も人々はそう言う。
理由なんてそれこそ漠然としたもの、世界を統べるが如しってやつ?

くだらない、なんてくだらない。

いかなる吉兆の印だって、
世界を手の内にしたって、
長寿を得たって、

欲しがりな僕は満たされない。


「今日は鬼灯さんが薬を貰いに来るらしいですよ」

変わらず暖かな木漏れ日が白澤達を照らす桃源郷。

鬼灯は白澤の恋人だった。
しかしそんなことは他言無用、
他人に言えるわけもない。

「またこの聖地を荒らしに来る悪い鬼が来るんだね」

また喧嘩なんてしないで下さいよ、と桃太郎は嘆息する。

「僕だってしたくてしてんじゃないよ?あの腐れ鬼が僕にぐちぐち絡んでくるから…」
「誰が腐れ鬼だ白豚」
「ひぃっ⁈」

急に白澤の後ろに姿を現した鬼灯に桃太郎共々、二人は小さな悲鳴をあげた。

「いつからいたんだよ…
変な登場の仕方すんなっ!」
「煩いです、徹夜明けで私はしんどいんです早く薬を出せ」

え、と白澤は詰まる。

「徹夜明けって…なのにわざわざこっち来たの?」
「仕事です、義務なんですから仕方がない」

「…」

ーー僕はコイツのこういう所が嫌いだ。
仕事第一主義って言うのか、
自分の疲労をかえりみない所が。
ひどく、癇に障る。

「…今日頼まれた薬まだ出来てない。から、暫く僕んとこで休みなよ」

今にも折れてしまいそうな細っこいその腕で何が出来ると言うんだろうか。
疲れた素振りも見せずに自分のことは二の次だと、

なんで、どうして。


言葉にしてしまえばひしゃげそうになるくせに。


「…いいえ、結構です」

やる仕事がまだ沢山残ってますから。


そう言った鬼灯の言葉に
何故かとても、

胸がずきんと痛んだ。
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