鬼徹【novel】

□着物の下の悪魔 R18 白鬼
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『今日は半径10m以上近づかないで下さい』

ついさっき、至って真摯な表情で言われたこの言葉。心意の読み取れない殺伐とした言葉は無颯爽に僕の胸を抉って逃げて行った。

「え…は、なに、急に」

理由なんてものは腐るほど思い当たるのだが、桃源郷の甘い香りが鼻腔を抜けて頭の思考さえも溶かしていく。
嫌いだ滅びろ死ねなんてそれこそ酒以上に浴びせられた罵倒だが、流石に近寄るななんて言われるのは心外だ。

「…理由なんてありません、ただうざいからです」

いやいや絶対そんなことじゃないだろ。僕の第六感がそう叫んでる。

「何だよ、言えよ」

そうやって返答を濁らされるのは嫌いだ。僕は割と根は理詰め人間なのかもしれない。

いや、人間じゃないか…て、そんなことはどうでもいい、とりあえず鬼灯が何故そこまで答えを渋るのかが気になる。

まさか、いやきっとこれはアイツの弱みを掌握するチャンスかもしれない。となれば力尽くでも聞き出してやる。

「ねえ、なんで近付いちゃダメなの」

そう言いながらじりじりアイツとの距離を縮めていく。
手の届く距離まで近寄り、腕を掴んでやった。

「…なんの真似ですか白豚」

「理由ぐらい教えてよ?」

オンナノコを口説く時のように温厚な笑みを浮かべる。大抵の女子はこれで一晩遊べるんだけど、コイツにはどうやら通じないようだ。

「私、貴方のその軽薄な笑顔嫌いです」

「嫌いでもなんでもいいよ、何を隠してるの」

「離れろ触るな」

振りほどこうとした腕により一層力を掛け、言うまで離さないよ、と笑いかけると眉間にシワを寄せ虫を見るような目で睨まれた。
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