鬼徹【novel】

□Ghost boy
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__くだらない。

その日は社会科で浄土真宗の話になった。そして先生の雑談で授業の本筋からはずれ、こんな話を聞いた。

人間の魂は輪廻転生して繰り返され、何度も産まれ変わる。境遇、姿形が違えども、来世ではまた会うべき人がいるのだと言う。

彼は迷信などそういった類を信じない。目の前にあるものがこの世の全てだと信じ切る。理系というのもあり、現実主義の塊のような人間だった。

見えぬ曖昧としたモノなんて信じてどうになる。人間死んだらお終いだ。次も糞もない、ただ暗転して何も無しだ。

丁 鬼灯は今年で高校二年生だ。来年の受験に控え、最近は勉強に精を出していた。理系クラスのトップを争う学力の持ち主で親や担任からも期待されていた。いい大学に行けば行くほど高校の名も高まるといったところだ。


終了のチャイムが鳴る。皆が一斉に伸びをした。今日はこれで最後の授業だった。



「はいでは、皆さん気をつけて帰るようにー」

いつも通り適当な担任の連絡事項。皆聞く気もない。大概は授業のときに持ち物など言ってくれるのだからこんなものは省けばいいと思う。

ざわつく教室内を一人目もくれず歩き出した。鬼灯は部活に入ってはいなかった。ここは県内でも名だたる進学校だ。勉強に追われて部活という名の娯楽になんて構っていられる暇は無かった。

もちろん部活に入っていなくとも友達はいた。しかし私生活を干渉される付き合いは元々苦手な鬼灯は、休日遊びに誘われても行こうとはしない。皆とは広く浅くのような関係だ。親しい関係を持った友人などいない。別に欲しいとも思ってはいなかった。

帰り道はいつもと同じ、道路の脇を沿岸線沿いに歩いていく。工事したてのタイルが真新しいようで歩きにくい。前の道は欠け、足場に良いとは言えないジャリがあった。長年歩いてきた彼にしてはそちらの方が足が慣れている。こんな艶やかなタイルでは落ち着かない。道の端はまだ工事が進んでいないらしく、入るな危険の看板が貼り付けられていた。

おもむろに落ちていた缶を蹴りつける。中にまだ少し残っていたらしく茶色い液体が地面に反してズボンに少し付いてしまった。

くそ、何だか今日はついてない。

心の中で悪態を吐く。そこでふと、何かを忘れたような気がした。課題だ。課題がない。
背負っていた真紅のリュックの中を探ったが、案の定だった。中にあるのは無情に連なった教科書と授業のノートのみ。きっと課題は机の中に入れっぱなしだ。幸いここから学校まではそう遠くはない。しかし下校時間は完全に過ぎている。先生にでも言って鍵を貸して貰おう。

その後もなんとなく、嫌な不安は続いた。勘の聡い鬼灯の嫌な予想とは大概当たってしまうのだ。


そう、
今日みたいな日には、特に。●●
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