夢物語【アングライフェン篇】
□本当のココロ
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ドルチェットに案内されながらメルジーネは自分の身に起きた変化に疑念を抱いていた。
(この前まで私はシン国の言葉さえ読めなかった……なのに、さっき彼の言葉を理解することが出来ただけでなく、彼の書いた名前を読めた……私の中のシン人の血が覚醒したのか……いや、そんな都合のいいことがあるわけがない……)
メルジーネは、マルコー氏が話していた真のハーフのことを思い出した。
(自分がもし真のハーフだとしたら?……知らないことが多すぎる……もっと真のハーフについて調べなくては……)
「ここまでが大体の組織の敷地だな、外も見てみるか?」
「!……あぁ、見せてもらおうか」
メルジーネは、ドルチェットに案内され、外に出て表情こそは変わらないものの内心愕然とした、このデビルズネストの建物の辺りは深い森に覆われ、それ以前にこの島の周りは……
「崖……」
そう急な崖によってできている島で見下ろすと崖に波が強く打ちつけているのが見える、落ちたらたぶん即死だろう。
(……これじゃ、逃げられないわけだ……)
「あんま、崖に近寄んなよ、落ちたらさすがの俺でも助けるのは難しいからよ」
「……ドルチェットは、あの男が人間じゃないって知っていて仕えているのか?」
「ああ、そうだよ、それに俺もただの人間じゃないしな」
「!……どういうことだ……」
「メルは、合成獣って知ってっか?」
首を振ったメルジーネにドルチェットは言葉を続ける。
「合成獣ってのは、人間と動物を合成させたやつのことをいうのさ、ここデビルズネストにいる大半がその合成獣だ」
「……聞いたことがある、人間と動物を合成させるヤバイ実験をしている組織が存在すると……単なる噂話かと思っていたが……」
(ま……ホムンクルスなんてものを作り出す奴がいるくらいだ、合成獣なるものを作る奴がいてもおかしくないか……)
「俺らはその研究所から逃げ出し、その時見つけてくれたのがグリードさんだったってわけだ」
「……ドルチェットたちは、ふだんは何をしてるんだ?」
「SWATの闇の仕事、いわゆる暗殺系統だな、国に反抗している組織を潰したりとかしている」
「……それを私に話してもいいのか?私が上に言うかもしれないとかは……」
「ああ、だってよ、キング・ブラッドレイもホムンクルスだし」
彼の一言に驚きを隠せないメルジーネ。
「!?なんだと!!アメストリスの……SWATのリーダーまでもがホムンクルスだと言うのか!!」
「お…落ち着けよ、なんだ知らなかったのか?」
「知らないも何も…………」
確かに思えばシン国で見たブラッドレイ長官の強さは異常だった、しかし、まさかブラッドレイ長官までもがホムンクルスだったなんて……
額を右手で抑えて混乱を収めようとしているメルジーネにドルチェットが心配そうに声をかける。
「メル?大丈夫か?なんか俺余計なこと言ったみたいだな……」
「……大丈夫だ、すまないドルチェット、しばらく…一人にしてもらえないか……逃げたりしないから……」
「……わかったよ」
とドルチェットは建物の中に入っていきメルジーネは崖の縁に立ちその海を眺めていた。
(ホムンクルスの狙いは一体なんなんだ……しかし、この海も濁っているな、これは戦争のせいか……)
そのとき、森に人影を見たような気がしたメルジーネはそちらに向かうことにした。