蒼生の錬金術師【シンの東壁篇】
□シン国の東壁
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アメストリス国のホムンクルスによる人体錬成から六年経った………ここシン国でその長い髪を高く結い上げ、シン国将軍を示す軍服を纏い、声を高らかに兵士たちを指導している女性がいた。
「今日は、剣による訓練だ!訓練だからといって手を抜くなよ、その怠り一つが戦場でお前たちの命運を決めると思え!それでは始め!!!」
キィンキィンキィンカギッガチャビュッ)
そんな彼女をみたとある一人の兵が隣の兵に話かける。
「この国の将軍って女だったんですネ?」
「お前新人カ?あのお方をただの女だと思っちゃいけねぇゼ、あの人は六年前、現皇帝リン・ヤオ様と一緒にこの国に来て、皇妃の座につくも今の大尉の座も獲得しちまうんだもんナ」
「皇妃って………皇后陛下!?なんで国のトップの伴侶が軍のリーダーヲ!?」
「でもよ、あのお方が大尉になってからは国も軍も良くなっタ、国は彼女が色々と政策を打ち出してくれるから貧しい民が減ったし、リン・ヤオ様が多民族を阻害せずにいてくれているから争いも減ったし、軍も前の将軍がサボり魔でヤル気が出なかったところ、あの厳しい指導だロ?でも厳しいといっても俺たち一人一人の実力をしっかり見極めた上の指導をしているし、細かいところまでの配慮が凄イ………まぁ、それで人々の信頼を積み上げてきたんだろうナ」
「しかシ………よく国のお偉いさんが認めましたネ?」
「そのお偉いさん方に女だから政治に口出しするなって言われテ、国にいる兵士全員と決闘して自分が勝ったら大尉の座をよこせって言ったらしいゼ?」
「えェ!?それじゃあの《シンの番犬》とも呼ばれる恣兄弟にも勝ったんですカ!?」
「あぁ、あの三人に関してはかなり時間がかかったらしいがナ…それで今は《シン国の東壁》って称される程の闘いの腕前と錬丹術の使い手ダ」
「へェ…錬丹術師でもあるんですカ」
「噂ではアメストリスの国家錬金術師だったっていう話もあル」
「今度見てみたいナ、将軍の錬丹術」
そんな二人に気づいた花燐は指を指しながら怒号を飛ばす。
「そこ!話をしている暇があったらとっとと訓練をはじめろ!それとも直接私が相手をしてやろうか!!」
「「は、はイ!すみませン!」」
キィンキィンキィンキィンカギッビュッ)
花燐は溜め息をつき、懐から銀時計を取りだし時間を確認する。
「ったく…こんな時間か……光琳」
「は!」
「私は自分の書斎に戻る、ちょっと上から頼まれた仕事をやっつけにな、ここの者たちの訓練指導引き続きお願いする」
「は!…あの煉大尉、いつも持ち歩いているその銀時計って形見か何かなんですカ?」
「ん?あぁこれか…これはアメストリスの国家錬金術師の証だよ、クセでな、これを持っていないとなんか落ち着かないんだよ、それじゃ頼んだぞ」