蒼生の錬金術師【シンの東壁篇】
□赤獅子盗賊団
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曇り空がみえる朝、花燐は腰を押さえながら廊下を歩いていた。
(……ったく、リンやりすぎよ、今日馬に乗るの辛いなぁこれは、はぁ……)
とその時彼女の後ろから声をかけた者がいた。
「おヤ、朝から溜め息ですカ?大尉」
「ビックゥ)厳慈郎中令!おっ、おはよう、今日は早いんだな……」
「おはようございまス、出発する前に馬の様子を一応確認しとこうと思いましテ……具合でも悪いんですカ?」
「いや……大丈夫だ、今日向かう村の報告をしてくれ」
「は!……昨日、視察に行った者の報告によりますと村はほとんど壊滅、盗賊共が火を放ったようで建物は全焼、村人は焼け死んでしまったようデ……」
「……チッ!ひどいことをする…嫌なもんだな、どこかの誰かを思い出す…で、その村は?」
「南の安長村でス」
「!?…厳慈急ぐぞ!!」
急に走り出した花燐を彼は慌てて追いかける。
「!?はっ…!」
(安長村は、この前私が直接視察した村じゃないか!…なんてことだ……)
一週間前……
「源じいさん、体調はどうだい?」
「おォ、これはこれは煉皇妃様、いつもいつもこんな下々の者に気をかけてくださってすみませんのォ」
「いいんだ、私は早く源じいが治ってくれれば嬉しいから、それに皇妃様なんて……私は呼ばれる資格ないよ……」
「何を言うとるんじャ、おまえさん以外にシン国の皇妃にふさわしい女性はおらんわイ、それにあの皇帝を支えられるのもおまえさんしかいないと思うがのォ」
「ふふ、ありがとうその言葉聞いただけでしばらくやってく自信持てた」
とその時バタンと扉を開け、小さい男の子が飛び込んできた。
「源じい!煉姉ちゃん来てるっテ!?」
「コレ!皇妃様とお呼びしなさいと何度モ……!!」
「いいの、いいの、李、今日はどうしたの?」
「あのサ、俺煉姉ちゃんにすっげー見てもらいたいもんがあんだヨ!」
「うん、わかった、それじゃ源じい、また来るね」
「おォ、またナ」
「それで見せたいものって何?」
「へっへー、見てろヨ!」
と李は地面に錬成陣を書くと、小さな馬の土人形を錬成した。
φ(..)カキカキバシュッ)
「じゃーン!どうダ!!」
「これは……錬丹術ね?誰に教わったの?」
「兄ちゃん!!でモ……またアメストリスに修行に行っちまったんダ……」
「そっか……それじゃお兄さんに負けないくらい李もたくさん修行しないとね」
「なァ、煉姉ちゃん…」
「ん?なに?」
「俺、将来煉姉ちゃんをお嫁さんにすル!もっともっと錬丹術の修行をして姉ちゃんみたいにこの国を守りたいんダ!そして姉ちゃんのことも守りたイ!」
「クスッ)お嫁さんはちょっと無理かな、私には将来を誓いあった人がいるからね」
「それじゃ、そいつから奪ってやル!!」
花燐は一瞬、目を見開いて驚くが次には満面の笑みで李を見る。
「楽しみにしとくわ、彼にも伝えとく、いつかこの国を一緒に守りましょう、その時には立派な錬丹術師になってね!」
「おウ!約束ダ!!」
「もし、李が錬丹術師になれたら虹を見せてあげる」
「まじデ!?姉ちゃん、そんなこともできんのカ!いいナ〜早く錬丹術師になりテ〜」