Book3 t2

□霖雨 水影
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この短い電話で私は何度テヨンの口から“ごめん”という言葉を聞いただろうか



あなたは何も悪くないのに…
ただ、テヨンとティファニーがそういう運命じゃなかっただけ
テヨンには辛い運命かもしれないけれど、それはもう受け入れて乗り越えるしかない



私だってそういうことはこれまで何度も経験した

好きだけど何かが違う
それはどうしようもないこと


私の場合はそう気づくと、割と早くに気持ちを切り替えることができてしまう
これ以上好きになってもどうしようもないんだって諦めてしまう
初めての別れで酷く心が傷ついてから、
私はいつからかそうやって恋愛をする癖がついてしまった




シカ「で?どこのホテル?」


テヨン「うん、えっと…」



テヨンはどれだけの想いでティファニーを好きだったのだろうか
昨日のテヨンの姿、
そしてこんなにボロボロになっている彼女が私の痛い初恋の思い出を蘇らせる

大好きだった彼と泣きながら別れたあの日
私は一方的に別れを告げられ、その別れを受け入れることができずに泣き続けた



あぁ…もう昔のことなのに…





あの別れは未だに私のトラウマになっている
どんなに好きでも叶わない想いがあるのだと、あの別れで嫌というほど思い知った



今のテヨンはあの頃の私だ
いや、それ以上かもしれない
テヨンは好きで好きで仕方ない相手に自分から別れを告げたのだから
相手が自分の方を向いていないと思い知る日々は、さぞ辛かったに違いない

しかし、それでもテヨンは最後まで優しかった
「弱くてごめんね」
そう言ってティファニーに別れを告げたテヨン

ティファニーを責めもせず、
まるで自分が悪いと言わんばかりのテヨンの別れの言葉は、聞いているこっちの方が胸が痛かった




シカ「わかった、じゃあまた後でね
着いたら連絡するわ」


テヨン「うん、ありがとう…」




私はテヨンに何ができるだろう?
あの日の私みたいな彼女を、私の精一杯で癒してあげたい

きっと今のテヨンは自分に自信を無くし、悲しみに埋もれているに違いない
私もそうだったし、テヨンの性格を考えてもそうなんじゃないかと思った


早く言ってあげたい
あなたは素晴らしい人なんだって
私はキム・テヨンがキム・テヨンだからこそ大好きなんだって




私ははやる気持ちを抑え、テヨンのもとに向かう準備をするために宿舎へと戻った






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