Book4 t3

□ソシみて Red or Pink 6
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テヨ「う〜〜ん…」



宿題を広げてから小一時間
私は悩んでいた



彼女は今頃、何をしているんだろう



夏休み前のテスト勉強をほとんど喫茶店でやっていたため、
寮の自分の部屋では全く勉強のスイッチが入らない
喫茶店に行こうかと思ったけれど、
喫茶店=ティファニーのことを思い出し、
彼女のことが気になってさらに宿題が進まなくなった


寮では宿題が進みそうにない
だけど喫茶店には行きづらい
ソニは忙しそうだから彼女の家にお邪魔するのも気が引ける
喫茶店には行きづらいけどティファニーのことが気になる
でもやっぱり喫茶店には行きづらい
しかしこのままでは宿題が進まない…



宿題をやると決めた時間から1時間、
私はペンをノートに走らせることもなく、そんなことをグルグルと考えていた
この1時間の間の成果は、ペン回しの技に磨きがかかったことくらいだ


クルクルクルクル…
クルクルクルクル…
クルクルクル… カシャン

クルクルクルクル…
クルクルクル… カシャン


無意識にやっていたペン回しを意識するようになってさらに30分
何度目かの失敗に嫌気がさしてペンを拾うことさえ嫌になった
そしてとうとう何もやることがなくなり、
宿題に喫茶店にペン回し、何も達成できない自分に強烈に嫌気がさしてきた



ああああ!もうダメだダメだ
喫茶店に行こう
喫茶店で勉強しよう、そうしよう!



半ばやけくそで勉強道具をバッグに詰め込んで喫茶店に向かった






カランカラーン



やけくその勢いのまま思い切り店内に踏み込む
すると、入ってすぐのテーブルで注文をとっているティファニーの後ろ姿が目に飛び込んだ


あ、今日は髪をアップしてるんだ
可愛い…


思わずぼーっとティファニーの後姿に見惚れていると、
彼女が後ろを振り返り、私を見つけてとても嬉しそうに笑った
「ちょっと待ってて」
笑顔でウインクしながらそう言われ、思わず頬が緩む

ティファニーの顔を見たら、スールを断られたことがなんてことないように思えた
私達が友達であることは何も変わらない
そう彼女の笑顔が物語っていた

彼女はマスターに注文を伝えた後、速足で私のところに戻ってきた


パニ「いらっしゃいませ
お一人様ですか?」


テヨ「あ、は、はいっ」


パニ「ふふっ こちらへどうぞ」


テヨ「ど、どうも」


仕事中はあくまで店員と客
笑顔ながらその姿勢をなるべく崩さない彼女に合わせ、客として言葉を返す

だけど席に着く直前、他のお客さんに見えないところでティファニーは片手で一瞬きゅっと私の手を握った

!?


手に伝わった彼女の温もりが特別優しく温かく思えて、驚きながらも嬉しくて私の顔が熱くなっていく


パニ「ご注文は?」


テヨ「えっ?」


パニ「ご注文はいかがなさいますか?」


テヨ「あ、ああ!注文!注文ね!」


わたわたとメニューを広げて見ていると、クスクスと彼女の笑う声が聞こえた



パニ「ふふふふっ テヨン、メニューが逆さまよ?
こんなことする人本当にいるのね
コメディーの中だけのことだと思ってた」


テヨ「ああ!逆さま!
ご、ごめん!」


再びわたわたとメニューを動かして見始める
しかし、結局私が注文したのはいつものメニュー
ティファニーはにっこり微笑んで注文を受けた後、私に言った


パニ「テヨン、私、あなたのいつものメニューだったら覚えてるから、
『いつもので』って言ってくれるだけでもいいよ」


テヨ「え?
あ、ありがとう
うん、今度からそうしよっかなっ」


そういえば、前も私が頼む紅茶を覚えててくれてたっけ
なんか…すごく嬉しい


また勝手に頬が緩む
それを隠すように両手で頬を挟んで誤魔化していると、
ティファニーが私に顔を近づけて小声で聞いてきた


パニ「テヨン、今日は何時くらいまでいる?」


テヨ「う〜んと…
今日は予定ないし、ここで宿題しようと思ってるから結構いると思うよ」


パニ「そう、よかった
私、今日はもうすぐバイト終わるの
テヨン、今日こそメアド交換よ?」


テヨ「あ、うん へへへっ
待ってるね」


パニ「じゃあ後で」


テヨ「うん、バイト頑張って」



ここ最近の私の悩みはなんだったんだろう
そう思ってしまうくらい、彼女は普通だった
というより、私と仲良くなろうとしてくれる彼女の様子は変わらなかった

それがとても嬉しかったし、
スールでなくてもティファニーとこうして仲良くいられるならそれでもいっかと思った



相変わらず可愛いな〜



この後すぐに彼女が運んで来てくれ、バイト中の可愛い彼女を眺めながら飲んだ紅茶は、
今まで飲んだどの飲み物よりも格別に美味しく感じた



→あとがき
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