Book4 t3

□Beauty and the Beast 4
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ティファニーは燭台ユナを手に持ち、先頭を行く置き時計スヨンの案内でお城を見て回る
スヨンは時計の装飾を手のように左右に目一杯広げてお城の広さを自慢げに示しながら、
かしこまった口調で話して歩いた


スヨ「東の塔には大広間がございまして、かつてそこではダンスパーティーなどが開かれ、ご主人様は…」


ユナ「お部屋に引きこもってたから参加なさらなかったよね…」


スヨ「あ゛〜〜う゛う゛んっ!
あ、え〜っと、広いダイニングもございまして、そこでは有名シェフによって世界中の美味しいお料理が振る舞われ、ご主人様…」


ユナ「…はいらないって召し上がらなかったしさ…」


スヨ「あ゛〜あ゛〜あ゛〜!
お庭も一流の庭師たちの手入れによって見事な花々が咲き乱れ…」


ユナ「ご主人様は外にはお出にならないからお気づきにならなかったし…」


スヨ「…ってユナ!あんたさっきからいらない小話いれすぎじゃない?
全然お城の良さが伝わらないじゃない!」


ユナ「だって…
事実だもん」


スヨ「まあ…それはそうだけれども…」


スヨンの案内とユナのツッコミを聞くごとに、野獣が何に対しても無関心でつまらない人物だということがわかった
ティファニーには野獣がなぜそんな心持ちでいるのか理解できなかった
話を聞く限りは興味深いイベントが数々このお城で行われていたらしいし、
こんなに大きな魔法のお城で、さらにこんなに不思議な城の住人達がいるというのになぜそんなに無関心でいられるのだろうか


パニ「あの人は、何を楽しみにして生きているのかしら
そんなに部屋にばかり籠っていたら退屈じゃない?」


スヨ「ご主人様にも…まあ…いろいろと理由がおありなんです…」


スヨンは悲しそうに微笑むと、小さく溜め息をついた
その後、3人で牢屋のある小さな塔と東の塔を繋ぐ渡しを歩いていると、
ティファニーはさっきの話の中で案内がなかった塔がもう一つあることに気づく


パニ「ねえ、東の塔があるってことは西の塔もあるのよね?
あれって西の塔?」


そう言ってその塔を指差すと、スヨンとユナがわかりやすく慌てだした


スヨ「な、な、な、何をおっしゃるんですか〜!
西の塔なんてななななないよね〜?ね〜ユナ!?」


ユナ「そうだよねスヨンオンニ!
西の塔なんて…ねえ!?
そんな東の塔があるからって都合よく西の塔なんて!ねえ!?」


パニ「二人とも、怪しい…
じゃああれは何の塔なの?
ちょっと行っちゃお!」


ティファニーは好奇心旺盛な顔をしてその塔のある方角に向けて足を踏み出す
すると、スヨンが先回りして決死の表情で行く手を阻み、
ユナは塔が見えないようにティファニーの目の前で両手をぶんぶん振って視界を遮った


スヨ「や、止めてっ!西の塔には絶対行かないで!」


ユナ「お願いします!西の塔だけはっ!」


パニ「…ってことはあれはやっぱり西の塔なのね?」



二人はティファニーの言葉にハッとし、口を噤んでしまった
何らかの事情でどうしても西の塔に行かせたくないらしい二人の様子を見て、ティファニーは小さく笑う

パニ「わかった
二人に免じて今はあの塔のことを忘れることにするわ」


そう言うと、本来向かっていた方向へと体を向き直した
二人はティファニーがようやく西の塔から興味を逸らしてくれたことに安堵する
安心から、スヨンはより饒舌にお城の歴史を語って聞かせ、
ユナは瞳をらんらんと輝かせながら身振り手振りを交えてスヨンの話に合いの手を入れてティファニーを彼女の部屋へと案内した





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