Book4 t3

□ソシみて Red or Pink 1
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「ごきげんよう」
「ごきげんよう」


爽やかな朝の挨拶が澄みきった青空にこだまする。
マリア様のお庭に集う乙女たちが、
今日も天使のような無垢な笑顔で、背の高い門をくぐり抜けていく。

汚れを知らない心身を包むのは、深い色の制服。
スカートのプリーツは乱さないように、白いセーラーカラーは翻(ひるがえ)らせないように、
ゆっくりと歩くのがここでのたしなみ。
もちろん、遅刻ギリギリで走り去るなどといった、はしたない生徒など存在していようはずもない。

私立リリアン女学園。
この学園は、もとは華族の令嬢のためにつくられたという、伝統あるカトリック系お嬢様学校である。
緑の多いこの地区で、神に見守られ、幼稚舎から大学までの一貫教育が受けられる乙女の園。
時代が移り変わった今日さえ、
十八年通い続ければ温室育ちの純粋培養お嬢さまが箱入りで出荷される、という仕組みが未だ残っている貴重な学園である。




マリア様は今日も穏やかな微笑みを湛え、迷える子羊を見守っていらっしゃる。


迷える子羊―キム・テヨンを。
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