Book4 t3

□ソシみて Red or Pink 3
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TaeYeon side



「テヨンちゃん、ちょっと待って〜」



放課後、薔薇の館で文化祭に向けた会議を終えて家路に向かっていると、
ソニのお姉さまである黄薔薇さまが後ろから私を追いかけてきた
因みに今日は私のお姉さまである紅薔薇様は所用のため会議の途中で帰ってしまった

私は黄薔薇さまがわざわざ私を追いかけてきてくださるなんてただ事ではないと思い、
何か忘れものでもしてしまったかと慌てて黄薔薇さまのもとへ駆け寄った



テヨン「黄薔薇さま、すみません
私、何か忘れものでもしましたか?」


黄「いえいえ違うの
大したことではないのよ
少しテヨンちゃんと一緒に歩きたかったの」


テヨン「はあ…」



黄薔薇さまと二人きりで歩いて帰るなんてほとんど経験がない
私にとっては十分大したことだったけれど、
黄薔薇さまは私と目を合わせてふわっとにっこり笑った後、横に並んでゆっくり歩き始めた


親友のお姉さまだし、薔薇ファミリーとして多くの時間を共有している
だけど、やっぱり私にとってはいつまでも憧れの薔薇さまのお一人で、尊敬して止まないお方

それに、リーダーシップに富むが時折暴走気味なうちのお姉さまである紅薔薇さまと、
ユリにどことなく似てだいぶ突拍子のないことをしでかす白薔薇さまという
個性的な二人の手綱を絶妙な具合でコントロールしていらっしゃる時点で、もう尊敬しかない

黄薔薇さまはいつも優しい笑顔でふわふわと柔らかいオーラをまとっているたんぽぽのようなお方
だけど、要所要所でしっかりと意見をまとめて導いてくださるところは、本当にソニに似てるな、なんとも思ったりする


マリア像の前で手を合わせ、再び二人して歩き始めたところで、
黄薔薇さまが小さく困ったように私におっしゃった


黄「リアがね、最近ちょっと元気ないのよ…」


テヨン「お姉さまが、ですか?」



“リア”とは私のお姉さま、紅薔薇さまの名前

薔薇さま方は生徒会役員としての役割を求められている場面ではお互いを薔薇の呼称で呼び合っていらっしゃるが、
それ以外の場面ではお互いに名前で呼ぶように使い分けている
そして、黄薔薇さまがそのようにお姉さまの名前で私に伝えるということは、
暗に学外で何かあったと伝えていらっしゃるに違いない



テヨン「お姉さまに何かあったのでしょうか?」


黄「あるといえばあるけど、ないから困ってる」


テヨン「え…?」


黄「リアがそう言っていたのよ」


テヨン「それは…どういう意味でしょうか?」


黄「妹のテヨンちゃんならわかるんじゃないかと思って」



う〜ん…
あるといえばあるけど、ないもの…


どうしよう
さっぱりわからない
お姉さまが困ってるのにわからない

私は妹なのに…



どんどんネガティブ思考に陥り始めたところで、黄薔薇さまがいきなり話題を180度変えた



黄「そういえばテヨンちゃん、最近夢中になってる子がいるんですってね?」


テヨン「あ〜それはえっと…いえ、そうではなくて」


思わず顔が熱くなり、慌てて手をワイパーのように左右に大きく振りながら否定する
だけど黄薔薇さまはふわふわと微笑んだまま、
私の否定する姿を少し楽し気な様子でご覧になっていた

しかし、しばらくして何かに気づいたような顔をした後、
また少し困ったように黄薔薇さまが小さく呟いた



黄「嫌だわ…
私ったらなぜ今まで気づかなかったのかしら
リアが人一倍寂しがり屋なことをすっかり忘れていたわ」


テヨン「え?」


黄「リアにとってもそんな時期が来たってことなのね…」


テヨン「えっと…黄薔薇さま、どういうことでしょうか?」



黄薔薇さまの思考回路についていけず、頭の上にクエスチョンマークを飛ばしながら尋ねると、
彼女はすっきりした顔をして微笑んだ後、私の頭を優しくなでた


黄「ふふっ テヨンちゃんは気にしないでちょうだい
テヨンちゃんもこれからいろいろと大変になるかもね
あなた、とっても人気者だから」


テヨン「あははっ…
黄薔薇さまは私を買いかぶり過ぎですよ」


黄「あら、まだ自覚してないのね
ふふっ リアが拗ねるはずだわ

それで、あなたの心を捉えている子とは上手くいきそうなのかしら?」


テヨン「上手く?」


黄「妹にするつもりではないの?」


テヨン「あ〜…そこはソニから聞いていないのですね」



どうやらソニはあの子のことをあまり詳細に黄薔薇さまに話していないらしい
ありがたいような、ちょっと困ってしまうような…

こうして何度も妹の話を持ち出されるたび、
やはり皆が私の妹を待ち望んでいることを感じて申し訳ない気持ちになる
私は苦笑いをして黄薔薇さまにお伝えした



テヨン「あの子はリリアンの子ではないんです
だから、妹候補というわけではなくて」


黄「まあ、そうだったのね
ごめんなさい
私、思い違いをしていたわ」


テヨン「いえ、いいんです
でも、やっぱり皆様は私の妹のことを気にされていますよね…」



私は思わずうつむいて小さく呟いた





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