Book4 t3

□ソシみて Red or Pink 10
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TaeYeon side



ミーンミンミンミンミーーー
ミーンミンミンミンミーーー



セミの鳴き声がこれ見よがしに薔薇の館に響き渡る
いつもなら気にならない夏の風物詩が今日はいつもより少しうるさく感じた


今日も暑っつい…


校内の景色にサンサンと降り注ぐ太陽の光を見つめながら、
そういえば少し前にはティファニーと「日差しが厳しいからすぐに焼けちゃいそうだね」
なんて話してたな〜と思い出す
彼女は夏が大好きだと満面の笑みで言っていた
だって、夏は彼女が生まれた季節だから

なのに…


大好きな季節に夏風邪を引いて体調を崩してしまったティファニー
毎日会っていた彼女に会えない今日は、心にぽっかり穴が開いたみたいに味気ない


ミーンミンミンミンミーーー
ミーンミンミンミンミーーー


私を励ますようにセミたちが大きな鳴き声を響かせる


セミさんよ、その元気を分けておくれ
できたらおうちで休んでいるティファニーに一番に分けてあげて


窓の外を眺めながら今頃ベッドで眠っているに違いないティファニーを想う


ああ…
私が鳥だったら、今すぐティファニーのところに飛んでいけるのに


近くの木にとまって休んでいる小鳥の姿にそんなポエムじみた想いを重ねていると、
突然背後から何かで叩かれた

えっ?


驚いて振り返ると、ソニが呆れた顔をして丸めた書類を握っている
周りを見渡すと、スヨンや白薔薇さまが椅子からのけぞらんばかりに大爆笑してるし、
ユリは口元をコーヒーで濡らして咳き込んでるし、
ジェシカはユリが噴き出したらしいコーヒーでまだら模様になった書類を摘みあげ睨みつけていた

いきなり現実に引き戻された後に目の前に広がっていたよくわからない状況に混乱し、
「ど、どうしたんですかっ?」と皆様に尋ねたが、
スヨンと白薔薇さまがさらにツボに入ったように体をよじらせて笑い始める
なぜか冷たい目で私を睨みつけているソニから視線を逸らし、
お姉さまに事の次第をお伺いした


テヨ「あの、お姉さまっ…
すみません、ちょっとぼんやりしてて…
何かあったのでしょうか?」


こっそり教えていただくために声のボリュームを落としてお伺いしたにも関わらず、
お姉さまは皆に聞こえる声量でハキハキと私の質問に答える


紅「テヨン、私はあなたの進む道をいつでも応援するわ」


テヨ「…は?」


紅「例えあなたが突然鳥になりたいと言いだしても、私はそれを快く応援すると言ってるの」


テヨ「はぁ…
って、えっ?」


もしや…


いつの間にか自分の席に戻っていたソニに目線をやるが、今度は向こうに目を逸らされた
代わりにソニの隣にいる黄薔薇さまと目が合い、無言のまま微笑みを返される
「私も応援するわ」という黄薔薇さまのお心遣いが言外に伝わってきた


…って、やっぱりさっき心の中で呟いていたポエムを口に出してしまっていたのか!


どうしようもない恥ずかしさで頬が熱くなる
スヨンと白薔薇さまはひーひー言いながら呼吸困難さながらの様子で笑い続けている


テヨ「いえっ、そのっ!
鳥だったらっていうのは最近のレッスン曲の歌詞でしてっ…!」


なんとかこの場を誤魔化そうとするが、すぐさまお姉さまに追い打ちをかけられた


紅「あら、“ティファニー”という名前の子が出てくる歌詞のレッスン曲があるのね
今度是非聞かせて頂戴」


テヨ「あ〜〜え〜〜それはちょっと…」


紅「テヨンは今日もレッスンに行くのでしょう?
すぐに今日の分を終わらせて早くその歌を練習しに行かなくてはならないわね」


テヨ「あ〜〜…
はい…
すみませんでした…」


自分の頭から湯気が出ているのではないかと思うくらい恥ずかしさで頬を熱くし、
体を小さく縮めながら大人しく書類に手を伸ばす
すると、隣からお姉さまが私の頭の上に手を乗せ、
「ティファニーさんによろしく伝えておいてちょうだい
こちらのことは何も気にしなくていいって」
そう言って私の頭を優しく撫でた

「はい…、お姉さま」
顔を赤くしたまま、お姉さまの優しい手つきを甘んじて受け入れる
なんだかお姉さまが私を介してティファニーを優しくなだめてくださっているように感じた


紅「テヨン、早く終わらせるわよ」


テヨ「はいっ」


それからの私達、紅薔薇姉妹の仕事をこなす速さは、
自己最高記録を軽く更新していたと思う
お姉さまもティファニーを気遣ってくださっていると思うと、とっても嬉しかった




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