Book4 t3

□Beauty and the Beast
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昔々、遠い国の美しいお城にテヨンという若くて可愛らしい城主が住んでいました
テヨンは裕福な家庭で育ち、幼い頃から欲しいものは何でも手に入れることができました
しかし、甘やかされて育ったこともあり、人とコミュニケーションを取ることが苦手で、極度の人見知りでした
さらに裕福なことから騙す人間も多かったため、警戒心が異常に強くなり、
大人になるにつれて自分の部屋からあまり出てこなくなり、引きこもりになりました


ある冬の夜
年老いた女の物乞いがお城にやって来て一本の薔薇の花を差し出し、
嵐をやり過ごすために一晩泊めてほしいと城主のテヨンに頼みました
オドオドしながらその物乞いの応対をしていたテヨンは、
彼女の薄汚い服装とギョロギョロとした目が恐ろしくて固まってしまいました
テヨンの目には彼女が恐ろしい怪物にしか見えません
固まったテヨンに物乞いがもう一度薔薇を差し出して宿を求めると、
テヨンは彼女を怖がってその薔薇を払い落としてしまいました

ギョロギョロとした目で見つめてくる物乞いを見ていたら、次第にテヨンの頭の中には
「この物乞いは詐欺師かもしれない」「騙してこの城を乗っ取るつもりだ」「泊まらせたりなんかしたらきっと殺されてしまう」
そんな被害妄想が広がり始めました
テヨンは物乞いの頼みをすげなく断ると、用は済んだとばかりに自分の部屋へと戻ろうとしました

しかし、物乞いはテヨンに見た目や思い込みで人を判断してはいけない
優しさや美しさというものは人の内にあるのだからと忠告しました

テヨンが再び物乞いの頼みを断ろうとしたとき、
年老いて醜い女の物乞いは美しい魔女に姿を変えていました


テヨンは何が起こったのかわからずパニックになり、
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ…」
と唱えるように謝りながら急いで自分の部屋に引きこもろうとしましたが、
もう遅すぎました
魔女はテヨンの心の中に人を信じるこころや愛のかけらもないことを見てしまったからです
そして罰として、テヨンを見るも恐ろしい野獣の姿に変え、
城とそこに住む人すべてに強力な魔法をかけてしまいました


テヨンはその怪物のような姿を恥じて
さらに城に閉じこもるようになりました
また、魔女は城のことを知る周辺の村の人々から、テヨンや城のことについての記憶も消してしまいました
城のことを知る人はいなくなり、詐欺師さえ一人も城を訪ねてくることはなくなりました
いつの間にか、テヨンが外の世界を知る唯一の手段は、魔女が置いて行った魔法の鏡だけとなりました


魔女が差し出した美しい薔薇はテヨンの21歳の誕生日まで咲き続けます
もしテヨンがこの薔薇の最後の花びらが落ちる前に人を愛することを知り、愛されるようになったら、
その時魔法が解けるのです
もしダメだったら、そのときはテヨンはそのまま一生野獣の姿でいなければなりません


しかし、いくら時間が経っても何も変わらず年月が過ぎていくだけで、
テヨンは望みも持てなくなり、落胆していました
テヨンはどうやって他人を信じたらいいのかわかりません
ましてや愛すことなんてもっとわからない

それに、誰が野獣なんか愛してくれるのでしょうか






→あとがき
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