Book4 t3

□Beauty and the Beast 1
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「行ってきま〜す!」


小さな一軒家から女の子が飛び出してきた
その子は小さなバッグを嬉しそうに振って歌いながら歩き出す


ここは小さな田舎町
町はずれの一軒家にバイオリン職人の父と明るい笑顔が魅力的な娘が住んでいた

娘の名前はティファニーといい、父親の影響で幼い頃から音楽を聴くのが大好きだった
彼女は多岐にわたる音楽に触れ、
楽器作りにのめり込んだ父親とは違って自らの喉を使って歌うことを何よりも好んだ

しかし、この小さな町で音楽はなじみのないもので、人前で歌うなんてもってのほか
そのため、数年前にこの町に越してきたバイオリン職人の親子は、
町の人たちにとってどこか風変りな隣人であり、自然と距離を置かれてしまっていた


町の人々は楽しそうに歌って歩くティファニーを奇妙なものを見るような目で見ている
だけど、彼女はそんな周りの目をものともせず歌い続けていた

可愛いのにとても変な子、それが町の人たちの彼女への印象だった



ティファニーがのびやかな歌声で唄いながら歩いていると、
その行く先を遮るように横から筋肉質の太い腕が彼女の顔の前に差し出された


ガク「やあ、ティファニー
今日もおでかけかい?」


パニ「ハイ、ガクソン
見てわかるでしょ?買い物よ」


ガク「一人じゃ大変だろう
俺が持ってやるよ」


パニ「まだ何も買ってないわ
それに、私は一人で買い物するのが好きなの
申し出はありがたいけど、結構よ」


ティファニーに明らかな好意を見せているこの筋肉マッチョな男性はガクソン
狩りが上手で体格も良くそこそこ美形
だけどガサツで不作法で思いやりのない彼をティファニーは毛嫌いしていた


ガク「ティファニー、そろそろプロポーズの返事をくれないか
もちろんYesなんだろうが、君はいつまでももったいぶってばかりだ」


パニ「はぁ〜…ガクソン
私は何度も言っているはずよ
私の答えはNO!あなたとは結婚しないわ」


ガク「またそうやって思ってもいないことを言う
そんなところも可愛いよ」


パニ「あなたは私の話を聞いているの!?
NO!N・O!
NOだって言ってるの!」


話の通じない男に苛立ちが募り、足音も激しく先を急ぐ
一刻も早くこの男を視界から消したかった

しかし、大柄なガクソンはこともなげにティファニーの隣を並行して歩き、
尚も彼女に話しかけてきた


ガク「ティファニー、俺たちが結婚したらさぞかしかわいい子が生まれるはずさ
君はうちで俺の帰りを待ち、子供たちの世話を見る
そうなれば変な歌なんか歌うより楽しい人生が送れるさ」


パニ「はぁ…ガクソン、私があなたと結婚するなんてあり得ない」


結局ガクソンに邪魔をされ、予定していた買い物を1つもできずに家に戻って玄関のドアを開ける
さっさと入って閉めようとしたら、ガクソンがドアに手を掛けてそれを阻止した


ガク「ティファニー、君も俺ももう結婚してもおかしくない年齢だ
この町で俺に相応しく、美人で気立ての良い女性は君しかいないんだよ
まぁ…変な歌は置いておいて」


パニ「あなたにはもっと素敵な人がいるはずよ
お生憎様(あいにくさま)、他をあたってちょうだい!」


ティファニーはドアを押さえていたガクソンの手をつまみあげて離させると、
すばやくドアを閉める
しばらくしてようやく彼の気配が消えて安堵した後、
家で作業をしていた父のもとへと向かった




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