Book4 t3

□Beauty and the Beast 2
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「すみません!どなたかいらっしゃいますか?
すみません!少しだけ暖をとらせていただきたいんです
どなたか…どなたかいらっしゃいませんかっ」



コンテストに向けて旅立ったバイオリン職人のモングは、
豪雨で視界の悪い中、広い森で道に迷って獰猛な狼の群れに遭遇した
狼達から必死に逃げる途中で馬車は車体部分が壊れ、これまで全てを懸けてようやく仕上げたバイオリンまでも失った

全てが惜しかったが、命があるだけマシだと割り切り、愛馬とともに命からがら狼の群れから逃げ切った
逃げた先に立派なお城を見つけ、これ幸いと飛び込んだのだった


この寒い季節に雨でびしょ濡れになってしまった体を少しだけ助けてもらおうと期待していたが、
この城はどうも様子がおかしかった
これだけ立派なお城なのに人の気配が全くない

自分が城の近くに来た時に外灯に明かりがついたため誰かがいると思ったのだが、
呼びかけても返事はない


「はっ…はっくしょん!!!」


一向に何の反応もない城の入り口でびしょ濡れになって冷気にさらされているうちに、
どうやら酷い風邪を引いてしまいそうだ

「お城の方にご挨拶できないままで申し訳ありませんが、
このままだと病気になってしまいそうなので暖をとらせてください」


そう言って彼はひとまず城の中に入らせてもらうと、大きな扉を閉める
城の中は暗く、どんよりとした雰囲気と冷たい空気しかなかった

城の入り口にあったコート掛けにびしょ濡れのコートを掛け、
城の中をキョロキョロと見渡しながら周りに誰かいないか探す
城の中の景色に気を取られている彼の後ろでは、
コート掛けが取っ手の部分を起用に動かしてコートのしわを伸ばしていた
乾きやすいように取っ手の間隔を少し拡げたところで彼が再びこちらを振り返り、
コート掛けのソヒョンはピシッと動きを止め、ただのコート掛けのフリをする


「ん?はて?
さっきと何かがが違うような…」


モングは不思議に思ってコート掛けのもとへと戻り始める
しかし、その途中でぶるっと体が震え、短い呼気を繰り返し、
直後に大きなくしゃみを響かせた


「はっ…ハ…ハッ…はっっっくしょん!!!」



くしゃみが真正面から飛んでくると予知したソヒョンは、
自分に掛けられた彼のコートで彼の特大くしゃみをガードする
しかし、思わず取ってしまった行動で今度こそ自分のことがバレてしまう危険が迫っていることに気づいた

と、そこで神の助けか、誰かが奥の方で大きな物音を立てて彼の注意を逸らせてくれた


ガタッ ガタガタッ



「ん?こっちに誰かいるのか?」



物音の出どころの方向を見極め、モングは次にそちらに向かう
暗い城内で目を凝らし、彼は明かりになるものを探しながらゆっくり歩を進めた



スヨ「ちょっとユナ!何やってんの!
こっち来るじゃん!」


ユナ「だって、あのままじゃソヒョンが危なかったよ?
それにあのおじさんこのままだと風邪引いちゃうんじゃない?」


スヨ「それはそうだけど…
ってコッチ来てるぅ〜〜〜!」



招かれざる客の襲来により、
精巧な作りの置時計スヨンは驚きと焦りでいつもより大きな音で時を刻む
ユナはロウソクに火を点け、寒さに震える可哀想な人間に少しの温かさを演出した

二人の間近までやってきたモングは豪華な置時計と燭台に目を奪われ、
それらをまじまじと見つめる


「ほぉ〜これは素晴らしい!
さすが立派なお城だ
置いてあるものも一流品だな」


嬉しいけど、怖い
嬉しいけど、怖い…!


スヨンは緊張でいつもより余計に秒針を早回しし、中途半端な時間に余計な鐘を鳴らす


ボーンボーンボーン


「おや?もう3時か?
こんなところでうかうかしてられん
早く帰らないと日が暮れてしまう

…と、その前にここで雨避けでも貸してもらえたらいいのだが…」


3時ではないが3時だと勘違いしたモング
狼のいる森を夜に抜けるのは余計に危険だと思い、彼は時間を気にして焦りだした
明かりとなる燭台ユナを持ち上げ、
周りを照らしてこれから帰るにあたって役に立ちそうなものを探す

だが、城の扉と反対の方向から美味しそうな食べ物の匂いがしてきて、
思わずそちらの方へと意識が向いた


「これは…美味しそうな匂いだ…」


ぐーぐるぐるぐるぐる…


匂いにつられるようにモングのお腹が空腹を訴え始めると、
彼は食欲に逆らえず匂いを辿って歩き始める
辿った先には立派な食堂があり、
何メートルあるだろうかと思うほどの立派なテーブルの中央辺りにちょこんと一人分の食事が準備されていた





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