Book4 t3

□Beauty and the Beast 4
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自分で決めたこととはいえ、これからどんな恐ろしいことが待っているのかと思うと、
ティファニーは恐ろしさでカタカタと小さく体が震えた
柵を握る手が震え、金属音が小刻みに鳴り響く


い、いいのよ…
パパをこんな恐ろしいところに置いてなんて行けない
だからこれは私が受け入れる運命なの…


何度も自分にそう言い聞かせる
しばらくして覚悟を決めると、暗く冷え切った牢屋の隅に腰を下ろして膝を抱えた


ああ、せめて最後にパパともっと話したかった
ちゃんとお別れを言いたかった…


こんな運命が待ち受けているなんて考えたこともなかった
なぜ町の人たちはこの恐ろしい城のことを教えてくれなかったのだろうか
それとも誰もこの城のことを知らないのだろうか

パパは助けに来ると言ってくれたが、あんな体でそんなことができるはずないのは一目瞭然だ
私はこれからの一生をここで過ごすことになるのだろう


暗い牢屋の片隅に座り、幼い頃から見ていた父の温かな笑顔を思い出して涙がこみ上げる

これまで親子二人で支え合って生きてきたのに、
その唯一の家族との最後がこんな別れ方なんてあまりにも酷すぎる
これから父は一人でちゃんと生きていけるのだろうか
バイオリン作りに集中しすぎてご飯を食べるのを忘れたり、
作業場で寝てしまって風邪を引いたりするのがしょっちゅうだったのに、
そんな父を気にかけてくれる人はもういないのだ
そして、私にも…

涙がとめどなく溢れだし、自分の鼻をすする音だけが小さな塔の中で反響した

この城にはあの野獣の他には誰もいないのだろう
人の気配を全く感じなかった
この城にいるのは自分と野獣だけなのかもしれないと思うと、ますます恐ろしかった
自分の泣き声しか響いていないこの牢屋でどんな最期を迎えることになるのだろうかと思うと、
心まで冷え切って凍えてしまいそうだ


そんなことを考えていたら下の方からカンッカンッカンッカンッと軽快な金属音が響くのが聞こえた
そしてその音はどんどんとこちらに近づいてきている




スヨ「はぁはぁ…やっと着いたわ!
ユナ、こんなところにいたのね」


ユナ「あ、スヨンオンニやっと来た〜」


スヨ「ご主人様はお部屋に戻られたわ
今のうちよ」


ユナ「あ、本当?
それじゃあ…」



人影は見当たらないのにどこからか話し声が聞こえた
もしやさっきのようにいきなり暗がりから恐ろしい野獣が現れるのではないかと警戒する
慌てて牢屋の入り口からできるだけ遠くに離れ、近くにあった木製の小さな椅子を両手で持った
何かあったらすぐに攻撃できるように持ち上げると、
声が聞こえてくる方向に注意し、人影を探す


ユナ「あの子がこのお城で少しでも快適に過ごしてくれるようにしないとね
こんなところから早く出してあげなきゃ!」


そんな話し声が聞こえたかと思うと、前触れもなくいきなり牢屋の扉がギギ〜っと音を立てて開いた
誰もそこにいないのにまるで魔法のように扉が勝手に開き、驚いて目を見開く

それからすぐ後、動く何かが牢屋の中に入ってくるのが見えた
それが何かを確認する間もなく、驚いて叫びながらそれに向かって持っていた椅子を振り下ろす


パニ「きゃあああ!!!」


バキッ!

ガシャンッ
ボーンボーンボーンボーンボーン…


椅子を振り下ろした場所には立派な置時計が倒れていた
椅子がぶつかった衝撃で壊れたのか、時計の鐘は鳴り続けている


なぜこんなところに時計が?
さっきまでこんなところに時計なんてなかったはず
先ほど何かが牢屋の中に入ってきたように見えたのは、
誰かがこの置時計を投げ入れたか何かしたから?


突然のできごとの連続でパニックになっていると、
信じられないことに、目の前にあった置き時計がまるで生き物のように自分で起き上がった
そして、左右の装飾を手のように器用に動かし、お腹部分の扉を開いて鳴り続ける鐘を自力で止める
鐘を本来のポジションに戻してお腹の扉を閉めると、
ティファニーと再び向き合った
文字盤部分には顔のような模様があり、それが怒ったような表情に変わる


スヨ「随分と衝撃的なご挨拶ですね
っていうか、いきなり何すんの!」


パニ「きゃっ!何!?
時計がしゃべってるの!?」


ユナ「スヨンオンニ、中に入る前にご挨拶しないからだよ
私達を見たら驚くに決まってるよ」


別のところからも声が聞こえたかと思うと、カンッカンッカンッと金属の燭台が音を立てて現れた
よく見ると、それはさっき自分でここまで持ってきたものだった
今度はその燭台が人形のように動き出す

もとから人形のような造形のものではあると思っていたが、まさかこの燭台まで動くとは…


燭台はスーツとハットを着こなす男装の麗人のような出で立ちで、
ハットの上と左右の手の先にロウソク立てがあった
彼女はうやうやしく片手をお腹に持ってきてお辞儀すると、
「驚かせて申し訳ありません
私はユナと申します」
そう言ってハットの先にポッと火を灯す


パニ「あなたも…動くの?
ここは魔法のお城なの?」


スヨ「魔法っていうか、呪いっていうか…」


パニ「え?呪い?」


ユナ「あ?え?ああ〜〜〜早くここから出ませんか?
こんなところで話すのも何ですから」


ユナは慌てて誤魔化すようにティファニーにそう大きな声で提案し、
スヨンと共に彼女を小さな塔から連れ出した




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