Book4 t3

□Beauty and the Beast 7
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お城を飛び出したティファニーは村に通じる暗い森の中を一心不乱に馬を走らせる
その途中、どこで目をつけられたのか狼の群れに後ろから追いかけられ始めた

ゥガゥッ…ガゥッ!

狼達は低い声で吠えながら馬の足を狙って攻撃をしかけ、足を止めようとする
ティファニーは明らかに餌としてターゲットにされてしまっている状況に恐怖を覚えた
馬の走る速度を上げてまこうとするが、狼達は一向に諦める様子を見せずに食らいついて追いかけてくる

そうこうしているうちにとうとう周りを囲まれて絶体絶命の状況になった
馬から降りて足元に落ちていた木の棒を拾い上げ、狼達を睨み付けながら棒の先を狼に向ける
恐怖で手が震えるが、ここで弱みを見せたら終わりだ


オォーーーン


狼の群れのボスらしき一匹がそう大きく鳴くと、狼達が一斉に襲ってきた
馬が後ろ足で狼を蹴り上げ、ティファニーは木の棒でなんとか応戦する
だけどそんなささやかな抵抗は短い時間稼ぎにしかならず、とうとうボスの狼が大きく口を開けてこちらに跳んできた

「きゃあーーーっ!」


絶望的な状況に思わず体を小さくして身構える
すると、いきなり地面が揺れ、目の前を闇が覆った
途端に辺りの木々だけでなく大地まで震わせるような低く激しい吠声が耳をつんざく
目線を上げると、目の前には野獣が立っていた


え?


そう思ったすぐ後には、狼が甲高い鳴き声と共に遠くまで弾き飛ばされていた

野獣は私たちを守るように狼の前に立ち、狼達の攻撃を全て受け、戦っている


どうして?

どうしてここにいるの?
どうして私達を守ってくれているの?


目の前では狼達と野獣の激しい攻防が繰り広げられていた


ガゥガゥガゥッ!


狼は地面を蹴って野獣に跳びかかり、腕に牙を立てて噛みついた
野獣は腕を振り回して狼を振り払い、服に噛みついた別の狼を掴んで地面に投げつける
何度か噛みつかれながら、野獣は大きな体を振り回して狼達と戦っていた

しばらくすると野獣の勢いに押され始め、狼達は尻尾を下げて一斉にその場から消えて行った


フーッ…フーッ…フーッ…


野獣はティファニー達に背を向けたまま狼たちの気配が無くなるまで殺気を解かず、
辺りが静かになった頃にようやく少しだけ後ろを振り向いて彼女をちらっと見た


パニ「あ、ありがとう…」


野獣「……」


パニ「あ、あの…っ」


どうして助けてくれたの?


ティファニーがそう声に出す前に、野獣はその場に崩れ落ちるように倒れる



パニ「きゃあ、大丈夫っ?」


野獣に駆け寄って体を仰向けにすると、ティファニーの手にべっとりと血が付いた


パニ「こんなに怪我してる…っ
どうしようっ早く手当しないと!」


ティファニーは辛そうに荒い呼吸を繰り返す野獣を支えてなんとか立たせると、
野獣を馬に乗せ、自分は馬の手綱を引いて歩き、逃げてきたはずのお城に向かい始めた
道中なんども野獣の様子を確認して気遣うティファニーの目からは、
もはや野獣に対する恐れと憎しみが消え去っていた





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