Book4 t3

□Beauty and the Beast 7
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ティファニーが野獣と共にお城に戻るとお城の者たちはたいそう喜び、
荒れ果てていた主人の部屋をすぐさま片付けて野獣を部屋に寝かせた
ティファニーは様変わりした野獣の部屋に足を踏み入れると、
野獣の傷口を丁寧に水で洗い、薬を塗って包帯を巻き、甲斐甲斐しく世話をする
薬が染みるのか、野獣は薬を塗られた時に小さく唸ったが、
その他は大人しくティファニーの言うことを聞いていた

一通り治療が終わると、ティファニーはベッドのそばに小さな椅子を置いてそこに座る
すると、野獣がぼそぼそとティファニーに話し始めた


野獣「その…さっきは部屋で…その…」


パニ「さっきは助けてくれてありがとう
あなたに助けてもらわなかったら、今頃私達は狼達の餌になっていたわ」


野獣「あぁ…いいんだ
こちらこそ、悪かった…
私も気づいたんだ
君の父上に酷いことをした私に君を責める資格などないと…」


パニ「ううん…私もごめんなさい
勝手に部屋に入ったりして…」


野獣「君の父上は(魔法の)馬車で無事に村まで送り届けたと聞いている」


パニ「そう…良かった
ありがとう」


ティファニーは父親が無事に村に帰ったことを知ると嬉しそうに微笑んだ
そしてブランケットを野獣の体を包むようにかけ直す

ティファニーが穏やかな様子で野獣の世話をするさまを見たお城の者たちは、
二人の邪魔をしないように静かに部屋を出て行った
二人はそんなことにも気づかず、お互いの存在をなんとなく気にしながら穏やかな雰囲気に浸っている


パニ「少し熱があるみたいだからゆっくり休んでね
私はここにいるからなんでも言って
早くよくなってね」


野獣はその言葉にほんの少し目を丸くした後、恥ずかしそうにブランケットを目元まで引き上げた
それから野獣は目元から上だけをブランケットから出し、もじもじした様子でティファニーをちらちらと見た


野獣「本当にここにいるのか…?
その…ここにいてもお前に得なことは何もないぞ?
今のうちに逃げたって…」


パニ「あなたは私達の命を助けてくれた
あなたは命を懸けて守ってくれた
その気持ちに少しでも応えたいの
損とか得とか、そういうことではないわ」


野獣「本当にここにいるのか…?
また嫌な思いをするかもしれないぞ」


パニ「ふふっ 嫌な思いをさせるつもりなの?」


野獣「いや…そうではないが…」


野獣は嬉しそうではあるが、同時に困惑もしていた
自分の後ろにある財産や地位を狙って近づいてくる者ばかりだった野獣にとって、
今までこうやって野獣を思って接してくれた人は誰ひとりいなかった
お城の者たちも気を使ってくれるが、やはり主従関係は消えない
だから、損得勘定なしに、同じ目線で誰かが自分を思って接してくれるのは初めてのことだった



パニ「ふふっ 私達、一緒に住もうとしてたのにお互いのこと何も知らないね
これからたくさん話して、お互いのこと知っていこうね」


野獣「……あぁ…
あぁ…わかった」



野獣は短く言葉を返すと、涙が滲みそうになる目をすぐに閉じる
体のあちこちが痛んだが、野獣はその日久しぶりに穏やかな気持ちで睡眠をとることができた





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