Book5 s2

□光の雫 運命のひと
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ユナと出会ったパーティーから一ヶ月が経った
あの子のことがなんとなく気になり続けていたが、連絡先も何も知らない私は縁がなかったんだと諦めた
そんなある日


私は仕事の打ち合わせで事務所を訪れ、マネージャーと話していた
すると、遠くから女性スタッフが私を大きな声で呼ぶ


「ジェシカ〜、電話よ」


シカ「誰?」


「女性で、ウナさんって言ってたかしら…?
あなたの知り合いだって言ってるけど…やっぱり違う?」


シカ「ウナ…?知らないわ
知り合いなら私に直接かかってくるはずだからファンの子だと思う
オンニ、ごめんなさい
私はいないって適当に言っておいてくれる?」


「わかったわ」


これまでにも何度かこうして知り合いでもない人が会社に電話をかけてきたことがあった
一度は電話に出た途端男性の荒い息遣いが聞こえてきて、あまりの気持ち悪さに慌てて切ったこともある

今回もきっとファンの子の一人がかけてきたのだろう
嘘をついて私と接点を持とうとする子にまで丁寧に相手をするのは違うと思う
だから私はそういう子にはなるべく関わらないようにしていた



「もしもし?ウナさん?
ごめんなさいね、ジェシカは事務所にいないみたいなの
もしよかったらあなたのお気持ちをお手紙か事務所のサイトからメールでくれた方が確実にジェシカに届くと思うわ

…え?
あ、ごめんなさい、お名前はユナさんなのね?」


えっ?
ユナ?


遠くから聞こえてきた名前に驚いてオンニの方を振り返る
聞き間違いではないかとオンニの声に耳を澄ませると、私が待ちわびていた名前がまた聞こえてきた


「う〜ん…取り次いでって言われてもね
ごめんなさいねユナさん、ジェシカは今いないのよ
ユナさんのお気持ちはジェシカにちゃんと伝えておきますから

ありがとう、ジェシカをそんなに好きでいてくれて
ごめんなさいね、これからも応援してね
それじゃあ…」


シカ「ちょっとオンニっ!待って!
電話切らないで!」


そう叫んで慌てて椅子から立ち上がり電話の方に向かう


シカ「ユナ、切らないで!
オンニ、切らないでって言って!
オンニ、私の知り合い!知り合いだわっ!」


オンニは私の剣幕に驚き、電話を持ち直して慌ててユナに待つように伝えた
私は事務所の固定電話の近くまで小走りで近づくと、オンニの手から慌てて受話器を取る


シカ「ユナっ?ユナ?」


ユナ『あ、ジェシカ、今事務所に戻ってきたの?
ごめんね急に』


シカ「ううん、私も連絡したかったけど連絡先交換してなかったから」


ユナ『うん、だからジェシカの事務所に連絡してみたんだけど、迷惑だったかな…?』


シカ「そんなことないわ
連絡くれて嬉しい」


ユナ『ふふっ よかった』


やっと繋がったユナとの糸が切れてしまわぬよう、
私は優しく受話器を包み込んで彼女に声を届ける


シカ「それで、ユナどうしたの?
どうして連絡くれたの?」


ユナ『あ、うん…』


シカ「何?」


ユナ『今日…会える?
もしジェシカの都合がよければ、だけど…』


シカ「今日って今日の夜?」


ユナ『何時でもいいよ
私は空いてるから』


シカ「ちょっと待ってて」



私は受話器から顔を離し、奥にいるマネージャーオンニを手招きする
不思議そうな顔をして近づいてきた彼女にスケジュールを確認すると、
撮影が順調にいけば今日の夜から明日の昼までフリーだと返ってきた


シカ「夕方まで撮影があるけど、今日の夜なら大丈夫よ」


ユナ『わかった
じゃあまた夜に…』


そう言って電話を切ろうとするユナを私は慌てて止める


シカ「待って!まだ連絡先聞いてないわ」


ユナ『あ、あははっ そうだったね
でも、ちょっと待ってて
私も準備があるからまた夜に事務所に連絡するよ』


シカ「携帯は?持ってないの?」


ユナ『今ちょっと事情があって使えなくなってるんだ
夜までにはなんとかするから』


シカ「わかった
連絡待ってるわ」


ユナ『うん、じゃあまた夜に』


シカ「うん、夜にね
忘れないでよ?」


ユナ『ふふっ 私から連絡したのに忘れるわけないよ
必ず連絡するから』


シカ「わかったわ」



優しく受話器を置いて電話を切り、電話を取り次いでくれたスタッフのオンニに話しかける


シカ「オンニ、今日の夜にユナから電話がかかってくるから必ず取り次いで
もしそのとき私がいなかったら、また必ず電話するようにユナに伝えるか、連絡先を聞いておいて」


オンニ「わかったわ」


本音を言えば仕事を早く切り上げてユナからの電話を待っていたい
だけど、撮影が何時に終わるかは正直わからないし、
下手をすれば深夜までかかってしまう
仕事が終わるのが遅くなってしまう間に、もしユナの気が変わってしまったらどうしよう
そんな不安が首をもたげてきて、私は懇願するようにオンニに念を押した


シカ「大事な電話なの
よろしくお願いします」


オンニが了承を示すようにしっかり頷くのを見るとようやく少し安心した
そして置いてけぼりにしていたマネージャーオンニのもとに慌てて戻り、
私は夜に向けて精力的に仕事をこなした




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