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□第16話 過去・記憶の返還
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ーーーーーーーー120年前



流魂街


「まま…ぱぱ…おなかすいた……」


「また?なんでそんなに空くのよ」


「…ごめんなさい」


「はぁ………。今日のご飯はもうないの。また明日ね」


「……わかった」


花音はとぼとぼと自分の部屋へ戻っていく。

この頃の花音は人間でいえば4歳くらいだ。


4歳にしてはハキハキと言葉もしゃべれ、考えることもできる子供だった。




うちだけ…お腹空く。

どうして?




自分だけが違うことは、花音も薄々感じていた。


もともと、"ぱぱ" "まま"と呼んでいるこの二人とは、血の繋がっている両親でも親戚でもなんでもない。

…赤の他人だ。


流魂街ではそういう風に自然と家族ができていくのだ。


「…めいわくなんて、かけれないよね……」


そう。

ただでさえ貧乏なのに、

赤の他人である花音にたくさんご飯を用意してもらうなんて迷惑すぎる。


「はぁ……」


ぐううう〜


大きくなるお腹の音。

ついに空腹に耐えられなくなり、花音は両親の元へ戻った。


「まま…っ!やっぱりおなかすい…


バシンッ!



………え?


何が起こったのか、わからなかった。



いきなりの、母親からの平手打ち。





「そんなにお腹空くわけないでしょう!?この迷惑娘!」


「…!」


そう言って母親は花音を蹴っていく。


「どうしてそんなにお腹空くのよっ!!私たちを困らせたいの!?」


「かはっ……ち、が………」


「俺たちから飯を取ろうっていうのかよ!!お前が小さいから生きていけねぇとおもって拾ってやったのに、恩返しせずにその上金もとってくのか!?」


バコッ!


父親も途中でまざり、花音に向かって物を投げたり、手を振るったりした。


違う、そんなつもりじゃないのに…。


どうして…どうして私だけお腹空くの…。


「ぐっ……!はっ…」


あまりの痛さと衝撃に、叫びたくても叫ばない。


呼吸もうまくできない。





うち…このまま死んじゃうのかな?




そう思ったとき、ようやく暴力の嵐がやんだ。


「……もうお前なんかいらねぇ!!2度とうちに戻ってくるな!」


そんな捨てセリフを吐き捨てるようにして、父親は母親と共に花音を家から少し離れたところに蹴って放り出した。


「けほっ……!がほっ…」


花音は苦しそうに咳をして息を整えながら、自分の身体を見る。


「……っ!?」


全身のいたるところに痣ができ、痣は青紫色に変色していた。


「……いた……い…?」


痛いはずなのに、痛すぎて感覚が麻痺しているのか何も感じない。


花音はバタンっとその場に倒れ、そのまま眠るように意識を失った。
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