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□第16話 過去・記憶の返還
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チュンチュン…
小鳥がさえずる音が聞こえて、目がさめる。
辺りを見回せば、自分の家ではなく西流魂街の森。
「…あさ、きたんだ」
うち、捨てられたんだっけ…。
「しょうがないか…。おなかすいちゃううちがわるいんだから…」
そう言って自分についた草を払って立ち上がる。
これから、どうしよう…。
ぐううう!
そう悩んでいる矢先、ものすごい音量で花音のお腹が鳴った。
「…とりあえず、ごはんさがしにいこう」
花音はフラフラしながら森を抜けて、街へ出た。
…といっても流魂街なので、とてもいい環境の街とは言えない。
さらにここは治安が悪く、みんな毎日のように物を争って喧嘩している。
もちろん、花音もご飯を盗むつもりでいた。
お金もないし、身寄りももういないのだから…。
花音は店主がちょっとふらっとどこかへ行ったとき、すぐに店の商品の前に行って、全ての商品をバッと盗み走り抜けていく。
ところが、そのときちょうど店主が戻ってきてしまった。
やばっ…!
「てめぇ!俺の商品盗んでんじゃねーよ!」
子供だからって容赦なしに、金属バッドのようなものを花音に投げつける店主。
ドカン!!
花音の頭にバッドは命中した。
けど、花音は止まらない。
店主も目を見開いている。
なぜなら、大抵の商品を盗んだやつには金属バッドを投げつけて、立ち止まらせていたのだから。
「………っ、」
花音は誰にも聞こえない悲鳴をあげていた。
ここでとまったらつかまっちゃう…。しんじゃう…。
そう思って、必死に森の中を走り抜ける。
店主はというと、諦めたのか自分の店にゆったりと戻っていった。
「はぁっ……はぁっ…」
どのくらい逃げたのだろう。
それがわからないほど、花音は全力疾走をしていた。
「……っ、いたい…よぉ…」
頭からズキンズキンと嫌な痛み方がする。
花音の瞳からは、自然と涙が溢れていた。
それは止まることなく、ポロポロと規則的に大粒で流れてゆく。
「つら…いよ……ひとり、は…やだ…よ……っ…!」
花音は今までの痛みを出し切るように、ひとり大声を上げて泣き叫んだ。
ずっと、ずっと……
一晩中………。
それから花音は毎日のように食べ物を盗んで、なんとか生きてこられた。
怪しまれないよう、毎日盗む店を変えながら。
そして…暴力をされながら…。
でも、これは"お腹が空く自分が悪い…盗みをした罰だ"と自分に言い聞かせて、痛みや辛さを我慢していた。
けど……
そんな我慢もプツンと糸を切ったように簡単に終わってしまった。