”違う”…知ってるそんなこと。
□第15話 恐怖の対象
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帆乃香の病室に入っていく俺たち。
わかってはいるけど、やはり点滴を打っている帆乃香を見るのは辛い。
俺たちは日が暮れるまでずっとここにいて、病室の椅子に座ってひたすら帆乃香が目覚めるのを待つ。
「…帆乃香、いつになったら起きるの?」
十四松が不安そうにして聞いてきた。
「…わかんないね。それに、起きたら起きたで帆乃香には…」
チョロ松は顔を暗くする。
当たり前だ。
「…帆乃香が、妊娠しているかもしれないんだったな…」
俺の呟きに、チョロ松は無言で頷く。
チョロ松曰く、帆乃香の秘部から精液らしき液体が流れ出ていたらしくて。
要するに中出しをされた。
そんなに不安なら妊娠検査すればいいって思うかもしれないけど、帆乃香が目覚める前に俺たちが結果を知ってしまって
それがもし本当に妊娠していたとしたら…
俺たちはどうやって帆乃香に接すればいいのかわからない。
だから、帆乃香が目覚めるまで妊娠検査に関しては置いておこうって。
「……はぁ」
なぜ、帆乃香は目覚めないんだろうか。
やはり精神的にかなりのダメージを受けているのだろうか。
「…俺、トイレ行ってくるな」
「あ!まってカラ松俺も行く」
そう言ったのはチョロ松。
「…十四松、1人でいれるか?」
「うん!大丈夫だよ!!それに1人じゃないよ、帆乃香もいる!」
「……そうだったな」
「十四松、くれぐれも暴れまわって点滴外したりしないでね」
「わかってるよ、チョロ松兄さん!」
「じゃあ行くかチョロ松」
「うん」
俺とチョロ松は静かに病室を出て行った。
「ねぇ、カラ松」
「何だ?」
「このまま、帆乃香が目覚めなかったらどうしよう」
「…チョロ松?」
「俺、怖いよ。あの病室にいて全く目覚めない帆乃香を見ていると、帆乃香が生きている感覚がしないんだ。ねぇ、帆乃香は生きてるよね?目覚めるよね?」
不安そうにして俺を見つめるチョロ松。
十四松と同じように、やっぱりチョロ松も…。
「…帆乃香はちゃんと生きてる、大丈夫だ。それに、いつか絶対目覚めてくれる。なんてったって俺たちの妹だからな」
…俺自身も不安でたくさんだけど、チョロ松の不安を少しでも取り除けたらって思って。
ほぼ根拠のない理由をつけてそう言った。
「…だといいな」
チョロ松は苦笑いで俺を見てきた。
…すまない、気の利いた言葉を言える兄じゃなくて…。
チョロ松の質問に対して他の弟や兄なら、なんて言ったのだろうか。