友人帳と恋人帳
□第3話
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瑠夏side
「ただいまー」
玄関から音がして、貴志の声が聞こえてくる。
私は急いでおばあちゃんの資料やらを段ボールに入れ直し、押し入れの奥に押し込めた。
…恋人帳は、鞄の中に。
コンコン
「はい」
ノックの音がして返事をすると、ゆっくりと扉が開かれそこには貴志が立っていた。
「あれっ、瑠夏もう帰ってきてたのか」
「うん!走って用事済ませたからね」
「そうか。なぁ……」
貴志は言いにくそうに、そして口を開けては閉じてを繰り返している。
何か聞きたいことがあるのかな、これは。
「そこで立ってるのもアレだし、部屋入っていいよ」
「た、確かにそうだな、ごめん」
貴志は私がソファに座っていたからか、正面のカーペットの上に座った。
「俺、伝えるのが下手くそだから直球で聞くけど…… 瑠夏は妖なのか…?」
「…………はい?」
私が、妖………??
「瑠夏の気配が不思議なんだ。人間というより、妖に近い気配がする。だから、本当は妖なんじゃないかって先生が疑ってて…。」
「…………」
私はなんて答えればいいのだろう。
私は妖じゃないけど、確実に妖の血は混じっている。
半妖である母の娘なのだから。
けど、これは貴志には言ってはいけないのではないだろうか。
半妖の存在はあり得ないとされているのだから。
さんざん迷いに迷った私の答えはーーー……
「それは、妖怪たちの返り血を浴びたからだと思うよ」
「どう、いう…」
「私ね、中学生の時に交通事故で両親を亡くしたの。でも、それはただの交通事故じゃなかった」
貴志は息を飲み込む。
「妖怪、か……」
「そう、妖怪が関わっている事故なの。その交通事故に私も遭ってたんだよ。死んだのは両親だけだったけどね。その時に、妖たちも死んじゃってて、それの返り血を大量に浴びたんだ。聞いたことない?妖の血を浴びるとしばらく匂いが取れないとか、妖力が強くなるとか、そんなこと」
半分本当、半分嘘のことを私は教えた。
妖も関わっているけど、本当は。
事故の原因は。
ーーーーーー祓い屋の、的場一門
「あぁ、祓い屋の知り合いから聞いたことある」
祓い屋、ですって?
つい、貴志を睨みつけてしまった。
様子を見る限り気づいていなそうだけど、
「貴志は祓い屋と繋がりがあるの?」
「まぁ、一応…。お世話になってる人が何人かいるんだ」
「ふーん、そうなんだ」
「…ってことは、瑠夏は人間で間違い無いよな?」
「そうだよ、人間だよ」
「よかった〜!妖だったらどうしようかと思った」
貴志はほっと胸を撫で下ろしている。
「ごめんね、間際らしい気配で」
「いや、いいんだ!それに妖だったとしても、俺は瑠夏は優しい妖だって、友達になれる妖だと思ってたと思う」
そう言って私に微笑む貴志に、私は思わずどきりとしてしまった。
「…っ、そう、ありがと!!」
「夏目ーーー!!!!!」
「「!?」」
突然、唸り声のような声が窓から聞こえて、私も貴志も反射的にくるっと振り返る。