”違う”…知ってるそんなこと。

□第 6 話 一松と散歩
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「ふぁーあ…」

今日は休日。
ベッドのすぐ横にあった時計に自然と目がいく。

「……10時か」

そろそろ起きようかな。

私は布団から出て、服に着替える。

今日はラフな感じでいこう。
そう思った私が選んだ組み合わせは、半ズボンにTシャツ。

「んー…これじゃあちょっと肌寒いかも」

そう思って上からパーカーを羽織って、下の階に降りて行った。















リビングの扉をサッと開ける。
けど、違和感があった。

「………?」

そう、いつも聞こえるはずの兄たちのうるさい声が聞こえないのだ。
開けてみてから納得した。
一松お兄ちゃんしか部屋にいなかったのだ。

「一松お兄ちゃんおはよー」

「……おはよ」

そう一言かけて一松お兄ちゃんの横を通り、台所へと進む。

「あら帆乃香おはよう」

「おはようママ」

「珍しくお寝坊さんね〜」

「ね、私もびっくり」

いつも8時には起きるのになぁ。

テーブルの上には焼きたてのパンが置いてあった。

「いただきます」

どのパンもものすごく美味しそう。
カレーパンらしきものを一口がぶりと食べる。

「わっ……美味しい……」

口の中でカレーがとろけて、甘いのにピリ辛で…

「ママ、これどこのパン屋さんの?」

「メリースっていうパン屋さんのよ。一松が買ってきてくれたの」

「えっ?一松お兄ちゃんが?」

意外だなぁ…。
面倒くさいからヤダとか言いそうなのに。

「ジャンケンで負けたのよー」

ママが私の思っていることをまるで透視でもしたかようにそう付け加えて言った。

なるほど。
なら行きそうだわ。

「ごちそうさまでした!」

カレーパン以外にもたくさん食べれたし、満足満足!











さて、どうしたものか。
とてつもなく気まずい。

「………」

「………」

「………」

「………」

何!?この拷問!
一松お兄ちゃん何か喋って欲しいんだけど!

状況を説明すると、私はスマホをいじっている。
その姿を一松お兄ちゃんがさっきから無言で見続けているのだ。

私と一松お兄ちゃんとふたりきりになることはほとんどなかった気がする。
多分、中1以来な気が。

基本、おそ松お兄ちゃんとかトド松お兄ちゃんとか十四松お兄ちゃんとか誰かしらいて、最低でも3人はいた。
しかも一松お兄ちゃんはみんなでいる時ほとんど口を開かない。
つまり、私は一松お兄ちゃんが苦手なのだ。

なんというか…例えるなら、他のお兄ちゃんたちが親友で、一松お兄ちゃんは最近できた友達みたいな。
決して嫌いではないが、すごく喋りやすいわけではない。
まだ距離感がよくわからない。

…頼むから……
せめて何か言って一松お兄ちゃん!!






「ねぇ」










え…?
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