”違う”…知ってるそんなこと。

□最終話 後日(HE)
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帆乃香side

あの和解した日から2年が経ち、私は20歳になり、大学2年生へと進学した。
兄たちは24歳になっても、相変わらずニートを続けている。

あの日のおかげで、私たちの間にあった変なものがなくなって、昔のように過ごしていた。

だけど、変わったこともあった。

「帆乃香〜」

居間のコタツの中でヌクヌクとしていた私に、トド松お兄ちゃんが居間に入ってきて話しかけてきた。

ちなみに今は5月。
けど、ニートがいるのでうちにはまだコタツがある。

「何?トド松お兄ちゃん」

「明日暇だったりしないかな?」

「明日は大学の授業もないし、暇だよ!」

「じゃあさ、駅前にケーキ屋さんができたんだけど、そこに二人で行かない?」

「いいよー!私、そこのケーキ屋さん行ってみたかったの!」

「ほんと!?よかった!絶対他の予定入れないでね!僕とのデートなんだから!」

「デ…ち、違うし…!これは、ただ出掛けるだけ…っ」

「あれー?帆乃香照れてんの?…ふふっ、可愛いんだから〜」

「〜〜っ、あーもうるさいうるさい!トド松お兄ちゃんあっち行って!!」

「えぇ!?理不尽なんだけど!?」

私はトド松お兄ちゃんを無理矢理居間から追い出して、落ち着こうと再度コタツの中に座った。

あぁんもう!…なんでデートとかって言うの…っっっ!

身体中の熱が顔に集まっていく感覚がする。

トド松お兄ちゃん無意識かもしれないけど、お店にいる時のトド松お兄ちゃんはエスコートがうますぎて"可愛い"というよりも"かっこいい"なんだから…。

「うぅ……」

お出かけだとドキドキしないのに、お兄ちゃんに"デート"って言われるとドキドキして…私はバカなの!?

ガラガラ…

「…あ、帆乃香いたんだ」

「うん。おかえり!チョロ松お兄ちゃん」

次に居間に入ってきたのはチョロ松お兄ちゃん。

手に持っている大量のアイドルグッズを見る限り、ライブに行ってきたのだろう。

「まーたライブ行ってきたの?ママのお金なのに…就活は?」

「うるさいなぁ〜、一応もらったお金なんだからいいだろ…。就活?知るか、そんなモン!」

「え。チョロ松お兄ちゃん唯一の常識人どこいっちゃったの??」

「…あーあったかーい」

チョロ松お兄ちゃんは私の発言をスルーしてコタツの中に入った。
その時、私の足にヒヤリとした感触がする。

「…っ、冷た!!チョロ松お兄ちゃん足!!」

「え?あぁ、ごめん。ライブ会場が外だったからさぁ…やっぱり5月ってまだ微妙に寒いんだよね…」

「てか、コタツ入るときにちゃんと中見てよ!ほんっとに冷たかったんだから!」

私がそういうとニヤリと下衆な笑みを浮かべるチョロ松お兄ちゃん。

そして…

「ひっ!………うぅ、チョロ松お兄ちゃん!!」

また、私の足に冷たいチョロ松お兄ちゃんの足をいきなりくっつけてきた。

「ククッ…帆乃香反応しすぎだろ……」

「う、うるさい!!冷たいんだからしょうがないでしょ!」

「本当にそれだけ…?」

チョロ松お兄ちゃんが私の顎をグイッと上に上げてくる。
だから、私の目はチョロ松お兄ちゃんの目だけを捉えて見つめ合う形になった。

「な……」

「他の感情はないの?ねぇ?」

低い声で囁かれ、心臓がドキッと跳ねる。

「…っ、し、知らないよ…」

絞り出せた声は小さい。

「…ぷっ、あはは帆乃香顔真っ赤」

急にチョロ松お兄ちゃんが笑い出す。

「だ、だって…!チョロ松お兄ちゃんが…!」

「んー?俺が何?」

「そうやって…私に意地悪して楽しむから…」

私の顔はきっとまた真っ赤に染まってるだろう。

「帆乃香可愛すぎか」

可愛い、と言われなんて言っていいかわからなくて、戸惑いと恥ずかしさで言葉が出てこない。

「〜っ、も、」

「…帆乃香、好きだよ」

「〜〜〜!?」

また、低い声で言われる。

私の心臓が、ドキッと跳ねる。

「ば…っ、そ、そんなふうに言われても…お、お兄ちゃんに堕ちたりなんかしない…っ!」

「チッ…」

「チッてなに!?チッて!!」

「俺、二階に荷物おいてくるわ…」

チョロ松お兄ちゃんはそう言ってコタツからゆっくり出て行き、あの大量のアイドルグッズを持って居間を出て行った。
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