ミドル系ごちゃ混ぜおそ松さん
□第1話
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トド松side
僕は高校を卒業し、この神楽学園大学に入学した。
六つ子の中でも比較的頭の良かった僕は、実はこの学校に入るのは簡単で。
この学校は偏差値が30という低さだからね。
だけど、問題はおそ松兄さんと十四松兄さんだった。
一松兄さんとチョロ松兄さんは、元々授業は聞いていたし、チョロ松兄さんに至っては真面目で。
一松兄さんは元の出来がいい。
カラ松兄さんはイタイのに変わりはないが、チョロ松兄さんと同様に授業をきちんと聞いていたし、一松兄さんと同様に元々の頭の出来は悪くなかった。
僕たちは中学、高校といろいろやらかしてはいたものの、学力はそこそこあったから特には問題なかった。
だけど、おそ松兄さんと十四松兄さんは別。
この二人はいろいろやらかしていた上に、学力が乏しかった。
おかげで内申も悪くて、そもそも受験することができないと言われたくらい。
…で、僕たち六人揃って入学できそうな大学は、クソみたいに評判の悪い…この"神楽学園大学"しかなかった。
おそ松兄さんと十四松兄さんは必死に勉強して、僕たち六つ子は無事に神楽学園大学に入学することができたものの…
ビッチが多いなぁと、率直に思った。
可愛い女の子が多いことは嬉しい。
けど、はっきり言って性格ブスが多すぎる。
ま、チョロ松兄さんはそんなことにも気づかずに緊張しちゃって、喋れなくなってるけど。
他の兄たちはどうだろう。
この大学の女の子たちは手慣れているみたいで、基本的に男子は女子の言いなりのようなものだ。
それも、女子は男子を手懐けているのがバレないように工作しながらやっている。
こういうところが女子って怖いよね☆
実を言うと、僕は童貞はとっくに卒業した。
多分、卒業したのは六つ子の中では僕だけ。
….可能性としてはおそ松兄さんがあるかもだけど。
入学して、いろんな女の子と連絡先交換して、遊んで………
そして、ヤッた。
今までみたくデートしていたら、あっちから誘ってきて。
僕は童貞卒業したかったし、単純にヤリたかったからその女の子に便乗して身体を重ねた。
そんな感じの女の子がこの大学には何人もいた。
多分、デートだけなら、クラスメイトとはほぼ全員しただろう。
そのうち半分とは身体の関係を持った気がする。
あ、もちろん僕からじゃなくてあっちから誘ってきたんだよ?
ほぼ…の理由は、たった一人だけ…まだデートをしていないから。
実を言うと、LINEも持っていない。
「みんなーおはよう!」
「「あっ!トッティおはよー!」」
僕が教室の扉を開けると、女の子たちが挨拶をしてくれる。
……あ。
挨拶をしてくれた女の子2人の隣には、僕が唯一未だにデートしていない女の子がいた。
名前は山梨春香。
顔は可愛いと思う。
僕の好みではないけどね。
あの子も経験豊富そうだし、簡単にヤらせてくれそう。
「何々なんのはなししてたの?」
僕は3人のところに行ってそう話しかけた。
「んーー!トッティの話だよぉ〜!」
「ほんと!?それは嬉しいな!」
絶対嘘だろうなぁと思いつつも、すごく嬉しそうにアピールする。
「ねぇトッティこの学校以外でのいい男紹介してよ〜」
「何言ってるの、美紅ちゃんには彼氏がいるんじゃないの?」
「あははっ!トッティそれ言っちゃう〜!?あたしとも美紅ともヤッたのに、意外と真面目なこと言うねぇ!」
「あたし、トッティとの相性いいと思うんだよぉ。いっそのことあたしと浮気しちゃわなぁい…?」
「も〜そんな冗談言ったら彼氏泣いちゃうでしょ〜」
僕は軽いノリで彼女たちの誘いを断った。
は?
誰がするとでも思う?
少なくとも夕凪ちゃんとは絶対無理。
僕と違って、ぶりっ子が出すぎてて気持ち悪い。
やるなら僕みたくうまくぶりっ子してくれないかなぁ。
そんなことを思っていると、ふと春香ちゃんだけが僕たちから離れた位置に移動していたことに気がついた。
………意外だなぁ。
話に入ってくるかと思ったんだけど。
キーンコーンカーン
「あっ授業始まるっ!じゃあねぇ春香、美紅、トッティ!」
「夕凪!またお昼ね〜っ♪」
「またね♪」
「うん、バイバイ」
夕凪ちゃんは違うクラスなので、自教室へと戻っていった。
美紅ちゃんは…夕凪ちゃんが自分のクラスへ戻ると同時に、自分の席へと座って行ったみたいで。
僕と春香ちゃんは未だ立ったまま。
…これはチャンス?
「ねぇ春香ちゃん!」
「ん?何?」
「今度僕とデートしない?」
少し上目遣いをして軽めにそう言ってみた。
少し、が重要。
やりすぎると狙ってる感が出て印象が悪くなるからね。
「う〜ん…ちょっと今月はお金がないから厳しいかなっ」
あれ…?
春香ちゃんの表情に変化はなかった。
今までの女の子は必ず照れるか何かしら反応をしてくれていたのに。
それに断りそうな雰囲気。
「お金なら僕が出すから大丈夫!」
いつもなら女の子に奢ってもらう僕だけど、仕方ない。
クラスメイト全員コンプリートするためにも、今回だけはお金を使おう。
だけど、春香ちゃんはもっと怪訝そうに顔を歪める。
「ね?どうしてもダメかな?」
さっきよりも上目遣いで瞳をうるうるとさせて尋ねてみた。
これなら絶対いいって言うでしょ!
今の僕に落ちなかった女の子はいないからね!
そんな自信満々の僕に降りかかった彼女の言葉は、衝撃的なものだった。
「トド松君ってさぁ…………嘘つきだよね」
「…!」
そう言って春香ちゃんは僕の横を通り過ぎて、席に着く。
驚きすぎて、動揺を隠せなかった。
まず、僕の呼び方…トッティじゃなくて、トド松君だったこと。
他の女の子たちはみんな僕のことをトッティと呼んでいるのに、春香ちゃんは呼んでくれていない。
そのことに驚きを受けた。
そしてもう一つ。
……僕のこと、"嘘つき"って。
激しく動揺した。
だって、図星だったから。
僕は末っ子だから、人への甘え方を知っている。
どんなことをすれば、どんなことを言えば喜んでくれるかとか、そういうことも含めて、僕はコミュ力が高い方だと思う。
僕は人に好印象をつけるため、思っていることとは違っても平気で"嘘"をつく。
常に、だ。
そして、それには誰も気づかない。
だから…………
まさか…気づかれるとは思わなかった。
そして、気づかれたことが…こんなに怖いことだってことも………。
春香ちゃんは僕の顔は一度も見なかった。
でも、僕にとっては好都合だった。
きっと、今の僕はポーカーフェイスが出来ていないだろうから…。