捧げ物

□そっけないふりをして(黄笠)
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*そっけないふりをして*


「笠松ー!見ろよ、これ!」
「森山…お前部室に何持って来てんだ!シバくぞ!?」
「ぐはっ!ってもうシバいてる!」
「お前が変なもん持って来るからだろうが!」

森山が部室に持って来たのは、クラスで回っている女の子のグラビア雑誌だったが、笠松はあまりそういう類のものには興味がない。

もちろん自分が女の子が苦手ということもあるがそれ以前にあまり女の子をどうこうしたいとも思わないし、雑誌を見ても可愛いとは思うが、それだけだ。
かといって男が好きかと言われればそうでもないのだからややこしい。

笠松は今、黄瀬と付き合っているが別に男が好きなわけではない。
黄瀬だから好き、なんて言ったら如何にも嘘っぽいがこれは事実で、黄瀬以外の男と付き合いたいとは思わないし、それ以上なんて考えたくもない。

例えば森山とか、まぁこれだけ女の子女の子とうるさい森山が笠松を好きになるとは思えないが、告白してきたら即答で断る。
森山のことは好きだが、それは友達としての好きであって、恋愛感情にはならない。

「あ、女の子!ねぇ!君、バスケ部に何か用?」
「あ、てめっ…!森山!」

本物の女の子が体育館の入り口に立っていると、森山は雑誌を投げ捨て女の子に声をかけた。

「あ、あのっ…!黄瀬くんはいますか?」

長いロングヘアーの女の子は顔を赤らめながら、はっきりそう言った。

森山は笠松が黄瀬と付き合っていることを知っている。
別に笠松は慣れているので構わないのだが、気まずそうな顔をしている森山をシバきつつ、黄瀬を呼んだ。

「笠松先輩っ!なんスか?」

犬か、と笠松が思ったのも無理はない。
もし黄瀬が犬だったら、はちきれんばかりに尻尾を振っているだろう。

「あの子、お前を呼んでるぞ。」
「あ…行ってくるッス。」

黄瀬が告白されるのにはもう慣れたが女の子の元に駆けていく黄瀬を見るのは好きじゃない。
お前には俺だけがいればいいなんて、思ってしまう自分が憎い。

「笠松さぁ、よく耐えれるよな。」

“俺なら絶対無理”という森山に“俺だって”と言う言葉が漏れた。
そっけないなんて黄瀬にはよく言われるけど、笠松だって嫉妬しないわけではない。
そんなのただの年上の意地だ。

「あ、黄瀬が走って来た。」

森山の言葉通り、黄瀬が走って体育館へ戻って来る。

「抜けてすいません…って、笠松先輩!?なんス「黙ってろ。」…はいっス。」

黄瀬が来た瞬間、笠松は黄瀬の腕を掴み部室へと連れて行った。
部室の中は黄瀬と笠松の2人だけ。
笠松は背伸びして、黄瀬の唇にキスをした。

「お前には俺だけで十分だろ…黄瀬。」

“他の奴に尻尾振ってんじゃねえよ”

なんて、普段なら言えない言葉が笠松の口からこぼれ落ちる。

「笠松先輩…。」

顔を赤らめた笠松はさっきの女子生徒の何倍も可愛い。
黄瀬は笠松を抱きしめて“俺には勿体ないほどッスよ”と呟いた。


2人だけが知っているある日の出来事。



End


***
あとがき

「僕は、天の邪鬼。」の企画サイト様に提出。
黄笠で嫉妬甘でした。

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