捧げ物

□五月雨と傘(日月)
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「それにしてもビニール傘だなんて日向らしいよね。」
「どういう意味だよ?」

男子は大抵ビニール傘なのが日向の中では普通で、伊月のような水色のシンプルな傘の方がビニール傘よりわりかし高い。

ビニール傘と色付き無地傘の金額の違いが良くわからないが、日向は今月金欠なのだ。
理由は言うまでもなく、あの武将フィギュア達が原因だが、生憎ビニール傘以外の傘を買うお金は残っていない。

「傘の中でキスとかちょっと憧れてたんだけど…ビニール傘ではさすがに出来ないし。」
「…お前なぁ。」

多分ビニール傘じゃなくても日向はきっとしないし、伊月も本気で言っているわけではない。

日向にそんな勇気や男気があれば別だが、クラッチタイムに入ったとき以外は日向は案外ヘタレなのだ。

「なんてね。日向はそんなことしないってわかってるし、するのは火神とかキセキの世代とかくらいだよ。まさか本気にした?」
「…ダァホ。誰が本気にするかよ。」
「…日向、ちょっと怒ってる?」

怒ってる、というよりはキセキや火神を引き合いに出されたことが日向としては気に入らなかった。

火神やキセキの世代はどこか男らしく強引にながらも相手を引っ張っていってるイメージがある。

同性からしても羨ましい体格と高身長。
顔面偏差値もかなり高い。
そんな奴らを引き合いに出されれば、嫉妬しないわけがない。

「…日向…?」
「伊月、俺の家寄っていくよな?」

疑問系ながらも肯定的な言い方に伊月の背筋がピシャリと固まる。

「日向…何でクラッチ入ってるの…。」

あんなこと言わなければ良かった、なんて伊月は今更ながら後悔した。
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