捧げ物

□五月雨と傘(日月)
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*6000hitキリリク日月
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*R18


五月は本当に雨が多い。

「困ったな…。」

今日の朝、伊月は珍しく寝坊した。
急いで家を飛び出したせいで、外は土砂降りなのに伊月の手元に傘はない。

昨日の夜遅くまで委員会の書類を書いていたことを後悔するも、傘は降ってこないわけで、こうなったら…と伊月はカバンを頭に乗せた。

「雨の日の飴はあめぇ(甘い)。キタコレ!」

さすがに今はメモれない。
大事なネタ帳を雨で濡らすわけにはいかないのだ。

伊月が駆け出そうと足を踏み出した瞬間、誰かに襟を掴まれる。

「ぐはっ!って、日向!?今首締まったんだけど!?」

カエルの潰れたような声が思わず出てしまったが、日向は全く気にしていないようだった。
日向の手元には透明のビニール傘がある。

「キタコレ!とか言ってたから首締められたんだろ。何も来てないし。…つーか、お前が傘忘れるなんて珍しいな。」

伊月はいつも朝から天気予報を見るのが日課なのでめったに傘を忘れたりしない。

「今日の天気予報、晴れって出てたから。あんなに空曇ってるのに大丈夫かなぁと思ったらやっぱり雨だった。」
「それでカバンか。」

伊月の手元にあるもので、傘代わりになるものといえばカバンくらいしか見当たらない。
タオルもあるが、この雨だったらすぐに濡れてしまって意味がなくなるのがオチだ。

「…伊月。」
「まぁそこまで遠いってわけでもないし、もしかしたら途中で止むかもしれないから。」

“心配しないでよ”と言う前に、伊月の前にビニール傘が差し出される。

「一緒に入って行くか?」

そう言った日向の顔は真っ赤で。
伊月は一度目を丸くした後“うん”と言って日向の隣に入った。
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