捧げ物

□結局は林檎飴(緑高+秀徳)
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*結局は林檎飴*


「また今年も盛大だな。」
「まぁ、ここらじゃ一番でかい祭りだからなぁ。」

灰色と白のストライプの浴衣を着た木村と深い藍色の浴衣を着た大坪が、祭りの会場となっている神社の入り口で話している。

高尾はそこに走って行こうとしたが、生憎高尾は深い色合いの紺色の浴衣を着ている。
緑間は高尾が走ろうとするのを予測していたのか、高尾がどんなに嫌がっても手を繋いで離さなかった。

高尾の少し前を歩く緑間は緑と白のストライプの浴衣姿。
いつも見ているはずの緑間の背中が大きく見えて、高尾は緑間の前に出ると大坪と木村に声をかけた。

「大坪さんに木村さんも早いっすね!あれ?宮地さんは?」
「あいつは今来てるみたいだぞ?ほら、あそこ見て見ろ。」

手を繋いでいることには木村と大坪は突っ込まず、高尾も先輩の優しさに感謝しつつ後ろを振り返る。

緑間と高尾の数メートル後ろにいたのか、宮地は黒地にキラキラとした花柄の甚平を着て歩いていた。
耳にはイヤホン、手にはiPodを持っている。

高尾は宮地が目の前までやって来ると、ぶはっと吹き出して笑い始めた。

「宮地さん、チャッラ!」
「うっせえな。轢くぞ!こっちは今日みゆみゆの生ライブをテレビで見る予定だったんだ。」
「でも、結局来てるのだよ。」
「緑間、埋めるぞ?って、お前ら何で手繋いでんの。」

不思議そうに首を傾げる宮地を大坪と木村が“さぁ、行くぞー”なんて言って無理やり連れて行く。
高尾と緑間は顔を見合わせると、お互いに顔を赤くして逸らした。

***

「焼きそばにたこ焼きにイカ焼きだろ?飲み物も買ったし…あ!とうもろこし!」

宮地がとうもろこしを買いに行って、木村と緑間が宮地に声をかける。

「フライドポテトとフランクフルトは買ってるぞー。あと、大坪が綿菓子買ってる。」
「こっちにはクレープもあります。」

とりあえず買いまくって、後で割り勘という話だが買った値段を覚えているのかいささか疑問が残る。
高尾は“唐揚げもあるっすよ”と言った後、近くの屋台にフラリと立ち寄った。

「あんず飴か?そんなんお前食うの?」
「いや、あんず飴って俺達みたいじゃないですか。」

いつの間にいたのか宮地の問いかけに、高尾は答えて屋台のおじさんに5本あんず飴を貰う。

「ミカンが大坪さん、ブドウは木村さん、パイナップルは宮地さん。」
「高尾、お前轢くぞ?」
「痛い痛いっす!頭割れるんで!」

見かねた大坪が高尾と宮地を離してくれたが、頭を片手で鷲掴みにされた高尾のダメージは大きい。
緑間が頭に当ててくれた冷たいお茶が心地よかった。

「真ちゃんはメロン巻きと迷ったんだけど、林檎飴。で、俺はコーラ巻き。」
「何であんず飴と林檎飴が一緒の屋台にあんだよ。」
「俺が知るわけないじゃないっすか。」

“ここの屋台適当だなー“なんて言いながらも、パイナップルのあんず飴を食べてくれる宮地に思わず笑ってしまう。
木村は宮地の後ろを歩きながら、“でもな”と切り出した。

「どうして緑間が林檎飴なんだ?緑間は普通メロン巻きだろ?」

高尾の連想からいくなら、そう考えるのが普通だろう。
すると高尾はキョトンとした後、ぶはっと急に吹き出して笑う。
それに木村と大坪が驚いていると宮地があんず飴を口から出して言った。

「高尾の前では緑間、いつも林檎みたいに真っ赤だからじゃね?」
「なっ…!?」

高尾にからかわれて、いつも真っ赤な顔をして怒る緑間。
容易に想像できるその様子に木村と大坪も吹き出して笑う。

「なんなのだよ!」
「ほら、そういうところな。」

かく言う宮地も笑いをこらえている。
怒り始めた緑間に高尾は“ごめんごめん”と平謝りをした。

緑間をからかった後は買った食べ物を食べて射的をし、緑間が見事ラッキーアイテムになるかもしれない熊のぬいぐるみを取ったり、宮地が射的の屋台の景品を全部取って屋台泣かせしたりした。

高尾は高尾で金魚すくいをして、周りの子供達の分をすくってあげたり、大坪はお菓子の掴み取りをしてみたり、木村はいつの間にか野菜を売ってたりして、各自好きなことをした後、花火を見るために集まる。

「緑間、今行け。」

花火が始まる5分前、大坪が緑間にそう言って緑間は高尾の腕を掴んで、会場から抜け出して行く。

「え!?ちょっ?真ちゃん!?」

着いた場所は近くの公園。
二人が着いた、ちょうどその時。
花火が空に大きく咲いて、高尾と緑間は言葉を失う。

「…キレー…。」

高尾が呟いた通り、空に上がった花火はとても綺麗なもので。
高尾が緑間の方を見ると、緑間も高尾の方を見ていて目が合った。

高尾が目を閉じて、緑間が高尾の唇にキスをする。
触れるだけのキスだったが、高尾には十分幸せだった。

「やっぱり俺は林檎飴が好きだな。」
「林檎の味でもしたか?」
「うん。来年来たときは俺も林檎飴食べたいな。」
「好きにするのだよ。」

花火が終わって、当たり前に来年の約束をする。




そんな夏休みの話。



End

***
あとがき

高尾100%様に提出。

緑高+秀徳で甘々でした。

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