刀剣乱舞

□Twitterシリーズ
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 初めて行ったその場所には、ずっと奥まで続く、真っ赤な鳥居があった。そこにはたくさんの人がいて、思わず隣にいた母親の服を掴む。そんな自分に気づいてくれた母親は、にっこり笑うと優しく手を取って、歩き始めた。キョロキョロと真っ赤な鳥居を眺めながら、母親の隣を歩く。
 時々、聞いたことのない言葉が聞こえたような気もしたけれど、そんなことよりも、今はこの不思議な空間を歩いていることの方が気になって仕方がなかった。歩いていると、いつの間にか怖い気持ちはなくなっていて、早くこの先に行ってみたくなってきて、思わず……
「ーー!!」
 自分を呼ぶ母親の声を無視して、そこから走り出していた。でも大丈夫、この先に行ったらちゃんと待っているから。ほら……鳥居を抜けたらこんなにも……。こんな、にも? 息を呑んだ……そこは、不自然な程の木々に覆われた場所で、目の前には大きな大きな建物があって……
「……! 君は……」
 綺麗な、着物のような服を着た男の人が、驚いたような顔で自分を見ていた。急いで後ろを振り返ると、あのたくさんあった鳥居も消えていて……
「……そうか、七つまでは……神の子、だったね」
 そんな言葉を呟きながら、ゆっくりと自分の方へ近づいてくる。
 逃げ出したいのに、動けない。けれど不思議と怖くはなくて、なんだか懐かしい気持ちもあって、自分は目の前の人を見つめていた。
「いらっしゃい、小さな主」
 一言、彼は呟いた。その優しげな声と顔を見ると、何故かとても泣きたくなった。どうして、知らない人の筈なのに、こんなにも、こんなにも……
『 ……かせん』
 驚く程に自然と、その言葉が口から零れた。意味の分からない言葉、けれど何故だか今……その言葉が心に浮かんできた。そうして一緒に流れてきたのは……涙だ。
「嬉しいねぇ、またこうして君に名前を呼んでもらえるなんて……」
 目の前の彼も、その目には涙を浮かべ……笑っていた。






【七つの神の子】
 とある本丸の、今は亡き審神者の魂を持って生まれた七つの子どもが、旅先で訪れた千本鳥居の中に在った神域に迷い込み、偶然本丸に辿り着いて懐かしき初期刀と再会するお話。
 昔と今の魂が混ざりあって、七つにしては少しばかり大人びていて、それでもどこか不安定で……そんな子どもが帰り道を思い出すまで本丸で暮らすこととなった。きっと刀剣達はこれでもかというくらい子どもを大切に愛でるでしょう。
 その子に昔の主の面影を重ねつつ、けれどかつての主ではないその存在に、微かな戸惑いと、柔らかな愛を抱きながら……ゆっくりと時間だけが過ぎていき、気づけば心に、小さな花が咲いているのであった。





2019.7.13(up2019.11.27)
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