EXO
□あまのじゃく
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「何ですか、クリス兄さん」
真剣そのものの顔をされても俺は笑いを堪えるのに今忙しい。がんばれ、俺の表情筋。あー、口の端がつり上がりそう。
3ヶ月くらいこのネタ引っ張れそう。
「・・・分かってるくせに白々しいな」
あはは、必死になっちゃって。いくらカッコつけててもその辺は人並みなんだ。
いや、本当に大変。
「何を、ですか」
「・・・」
すぐに答えられないくらいには怒り心頭らしい。眉をひそめてすごい目力で睨んでくる。ああ怖い怖い。
いやさ、ご立腹なさるのもごもっともだけど、あなたも悪いと思うんだよね。だって、あの子さ、ちょっと優しくしただけでなびいちゃったんだよ?
もうちょっと頑張らなきゃダメかなって思ってたのに拍子抜け。これじゃあつまんない。
「ねぇ、兄さん、一体どんな扱い方してたんですか。」
どんなひどい愛し方してたんですか。
ちょっと優しくしたら泣いちゃったんですよ、あの子。
前からいけ好かないとは思ってたけどまさかこれほどなんて思わなかった。あの子の涙を思い出したら何となく笑いが引っ込んだ。いつの間に情が移っていたっていうんだろう。
「余計なお世話だ」
不快感を隠さない表情。
この人の傲慢は底無しか。
一気にしらけた。
まあそんなもんでしょうね。
好きなら大切にしてやれば良かったのに。
ばっかだなぁ。
「さっきからだんまりですけど、何なんですか一体。熨斗付けて返せば満足しますか。」
もう面倒になってきた。からかってみてもつまらないし。
何も言ってこないから兄さんをその場に残して立ち去った。