EXO

□ブレイクタイム・ティータイム
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(ルハン)

雨が上がって虹が掛かっても晴れやかな気分には全くならない。ぶらぶらと町を歩いてもなーんとなく目につくものにイライラする。腕組んで歩きながら『綺麗だね』なんて写真とってるカップルさん達とか。いつもならこんな気分にならないのに。若干惨めだ。

それもこれも理由はちゃんと分かってる。喧嘩しちゃったんだもんな。あれだけ意地張った以上謝るのも難しい。あぁ、どうしよう。今ごろ泣いてるかもしれない。

「はぁ・・・」

連絡の来ていないスマホを見てため息をつく、どうしよう。こういうとき、足が向かう先は自然と決まっている。

「こんにちはぁー」

「あ、いらっしゃーい」

扉を開けるとカランカランとベルが鳴る。小さい喫茶店。人懐っこそうな笑顔で出迎えてくれたのはバイト君のタオ。最初はとっても柄悪く見えたのは内緒だ。

「やっほー久しぶりー」

「久しぶりって先週も来たじゃん〜」

「んーそう?あれ?店長さんは?」

いつもならパッと目につくサイズの店長さんがいるはずなのに。

「あぁ、店長なら買い出しに行ったよ」

「普通タオの仕事じゃないの?」

「俺買い出しって気分じゃなかったから」

ニコニコ無邪気に笑うタオに末恐ろしさを感じる。
相変わらず甘いなぁー、店長さん。

無駄にカッコいい店長が買い物かご持ってる姿を想像すると、さっきよりは何となく少し元気が出た。たぶん山盛りおまけ貰って帰ってくるぞ。女の人はああいうのに弱いからね。

「ご注文は?」

「いつもの」

「かしこまり〜」

パタパタと黒髪が厨房の方へ行ってしまった。静かになった瞬間にまた悶々とした気持ちがのし掛かってくる。スマホを両手で包んでため息をつく。情けないなぁ。

「シウちゃん」

小さく呟くと恋しくなった。会いたくなった。ごめんねって言いたくなった。
窓の外を見ると青い空がのぞいていた。嫌われてしまったらどうしよう。

「お待たせ」

穏やかな声とカップが置かれる音がして、はっと我に返る。気づかなかった。

何となく心配そうな顔のタオが口を開く。

「シウミンって人と何かあったの?」

会ったことことは無いけど、と付け加える。まだシウちゃんをここに連れてきてない。ただ手土産にケーキ買って行ったりとか、タオが知ってるのは俺がよくのろけてるから。

「・・・喧嘩しちゃった」

「仲直りしたい?」

うん、と首を縦にふる。するとタオはうーん、と悩んだようなそぶりを見せてからちょっと待ってて、とまた厨房へ向かった。

持ってきたのは小さな箱。

「これなに?」

「試作品のケーキ。これ持って仲直りしに行けばいいと思う。」

味は保証する!と笑うタオ。味なら心配してないよ、俺も彼もここのケーキは大好きだから。

「あ、お金は?」

「いらなーい、その代わり」

「その代わり?」

「仲直りしてその恋人さん連れてきてね!」

恋人だなんて一言も言ってないのに当然のように言うタオ。魔法使いみたい。

シウちゃん許してくれるかな。

「ごちそうさま、お代、置いていくね」

「はい!約束、絶対だからね?」

「うん、ありがと」

コーヒー代を置いて、席をたつ。頑張って、とタオはひらひら手を振った。
扉を開けて外に出ると、雨が降ってたのが嘘みたいな天気だった。

発信画面で1つ深呼吸して電話をかける。

*ブレイクタイム

(あ!もしもし、シウちゃん。さっきはごめん、ほんとにごめん)
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