EXO
□月夜の晩に
1ページ/2ページ
(タオ)
「ただいま」
いつもみたいにドアのベルが鳴って、やっと帰ってきたのはルハンさんが出てから20分後。買い出しにしては長すぎるよ。
「おかえりなさい」
遅かったね、と笑えば店長さんことクリス哥哥は困った顔をする。もしかして、花屋のおねーさんに引き留められてたとか?それとも、三軒向こうの雑貨店のお嬢さん?
色々想像して可笑しくなる。哥哥、女の人には強く出れないもんね。
「変わったことはなかったか?」
言いながら、冷蔵庫に食材を手際よく放り込む店長を後ろから眺める。
「ああ、ルハンさんが来たよ」
「へぇ」
「次、恋人連れて来てくれるって」
「それは楽しみだな」
きっとすごく可愛い人だよ。だってあのルハンさんが溺愛してるんだもん。
ふふと笑って言えば、哥哥もいつもあれだけ自慢してるもんなと笑う。
「今日は店閉めるか」
「はーい」
店のドアに掛かっている『open』の札をひっくり返す。テーブルを拭いて、掃除して明日の下ごしらえ。いつもの作業。
「ねぇ、てんちょー」
「なんだ?」
机に向かって帳簿をつけている哥哥に後ろから抱きついて、腕を首に回す。
「新メニューでカクテルとかどう?おねーさん達向けに。」
「お前が飲みたいだけじゃないのか?」
「あは、半分正解」
「まぁ考えてないわけじゃないが」
「おぉー」
嬉しい、の意味を込めて額をぐりぐり首筋に押し当てる。哥哥の大きい手が俺の頭をワシャワシャ撫でる。俺、犬みたいだね。