EXO-ss

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◆ベッキョン 

タオがソファで寝転がっていた。
風呂は入った後らしい。

「タオ、風邪ひくから起きて」

「ん〜…」

起きない。
少し唸って反対を向いてしまった。

「風邪ひきたくないだろー?起きなって。」

がっしりしたタオの肩を揺する。

「ぅ〜…」

「!」

タオの手が俺の手首を掴み、自分の方へ引き寄せた。手加減なしの力に敵うはずもなく、俺の身体はバランスを崩しタオの方へと倒れこむ。

「タオ、起きろって」

「ん」

やっと眠たげに目が開かれる。
俺を認識したのかへにゃっと笑う。
そのまま流れるような動作で唇を奪われた。

「!?、タオ、」

逃げようともがいても一向に抜けられない。ますます俺を掴む力が強くなる。手首が軋む。

「痛っ」

涙目になった俺の顔を見てタオが不思議そうな顔で俺の顔を覗き込む。また柔らかく笑みを浮かべて、俺の知らない言葉を投げかける。

「タオ、俺中国語そんなに分かんないの知ってるだろ」

タオは相変わらず俺を拘束したまま、流暢に俺の知らない言葉を話し続けた。

初めてこの弟を怖いと思った。

2014/05/29(Thu) 19:04 

◆シウミン 

「俺、シウミンがいればそれでいい」

きっとその言葉に嘘偽りは無いのを俺はよく知っている。満面の笑みに陰りが無いこともよく分かってる。

ただルハンの背後に見える、膨大な第三者。その影はとてつもなく大きいから、ルハンがルハンだけの物で無いことを厭というほど思い知る。

「でも、ルハンが居ないと困る人がたくさん居るだろう?」

「そんな人知らない」

ルハンは真っ直ぐな目で俺を見る。
この綺麗な人間は本当に知らないんだ。

「でも」

とルハンは続ける。

「でもシウミンを必要としてる人が沢山居るのは知ってる」

「…そんな人お前くらいしか居ないだろ」

「ううん」

と悲しそうにルハンは首を振る。

「お互いにわかってないのかもね」

「そうだな」

2014/05/29(Thu) 06:52 

◆タオ 

お話を書きたくなった。

分からない綴りはあの人に尋ねて一生懸命書いた。

あの人は僕の書いたお話を読みたがった。

でも、僕はまだ完成してないからダメって答えた。

もうしばらくして、お話ができた。

あの人はもういなかった。



完成したら読んでくれるって言ったじゃないか、嘘つき。

楽しみだって言ってくれたじゃないか。



悲しくなって声をあげて泣いてしまった。

2014/05/21(Wed) 06:55 

◆レイ 

夢を見た。

とても穏やかな夢だった。



大好きな君が笑っていた。



何がそんなに可笑しいの?



僕も笑って尋ねた。



内緒。



また君はクスクス笑った。



そこまで書いて、ペンを下ろした。こんな嘘っぱち、誰が喜ぶのだろう。幸せのための嘘なら皆喜ぶのかな。騙されてくれるかな。

僕は自分が死ぬ夢を見た。

地球の裏側が朝を迎える時間になった。僕は一つ伸びをした。天井を見たら自然と長い息が漏れた。

自分を騙せれば幸せなのだけれど。

2014/05/14(Wed) 07:02 

◆ルハン 

死神ルハン。

美しいのはその方がゴネる奴が減るから。
死なないのは神の副産物だから。俺たちってそんなもん。

俺の仕事は人間の魂の回収。放っておけば厄介な化け物のエサになるらしい。

魂は人間の中で作られていく。だから俺みたいな連中にはその人間が生きていてもどんな魂を持っているか分かる。

でも俺がいくら働いても予期しない死で取りこぼしたりもする。魂になってしばらくすると生前のかたちになる。人間が言う幽霊みたいなものだろうか。

「ふぁ…」

なんとなくあくびが出る。
眠りは必要無いけれど、こうも人間ばかり見ていると人間の真似事をしてしまう。

「ああ、また夜明けだ」

眩しくない光に目を細め、今日も魂の輝きに目をこらす。毎日同じ、人間以下の繰り返しのルーティーン。

また君に会おう。

--------

『…ルハニ、俺、どうなっちゃうの?』

目を大きく見開いて、立ち尽くす彼。
その姿はみるみるうちに黒い影に包まれていく。

『ダメ、ダメだよシウミン。何も考えないで!』

とっさに叫ぶ俺。

『嫌だ、怖い、怖い、止めて』

ぼろぼろと涙が白い頬を伝う。
手を伸ばす、絶対に届かないのに一生懸命。

どんどん彼の形が崩れて、真っ黒な影が消え去った、その場にへたり込んで俺は消え入りそうな声で呟いた。

『嗚呼、また助けられなかった。』

2014/05/13(Tue) 20:46 

◆ジョンイン 

カイ→スホ



ジョンインは夜が嫌いだった。
周囲の人間より闇の中で目が効かないのだ。
星が全く見えない、と友人に一度言ったら『鳥目なんだな、お前』と言われたが気にならなかった 。

街灯の少ない夜道では障害物もあまりよく見えない。
極力人に遭わないようなルートを選びながら帰るジョンインは急いでいた。

ジョンインは暗い夜道で目を凝らして腕時計の文字盤を読んだ。愛用のスマートフォンさえ電池切れを起こさなければこんな面倒をしなくてもすんだのに、とジョンインは思う。時間は一時をまわったところで門限はとっくに過ぎている。

『またジュンミョンヒョンに怒られる』

そう独り言を言って少し足を早めていった。

心配されないよりはずっと良いことを頭では理解していた。でも、自分だってもう子供ではない、過保護が煩わしい。煩わしい?、いいや、違う。会いたくないんだ。

ジュンミョンの仕草、口癖、視線の運び、全てに翻弄される自分が許せない。翻弄されるたび、いつも知っている自分の感覚が離れていくような感じがする。生まれて初めて、身を焼くような劣情を知った。自分が自分を分からない、そんな感覚は真っ平御免だ。

正面の扉の前で三秒立ち止まり、ため息をつき、ジョンインはゆっくりと鍵を外し扉を開けた。

扉を閉める間際、真っ暗な夜空を振り返ってもやっぱり星は見えなかった。

2014/05/13(Tue) 20:25 

◆タオ 

愛ってなんだろうね。
誰も答えてくれない。

皆、めいめい違うものに愛だの恋だの名前をつけている。だから、皆、皆違うことを言うんだ。

「わぁ、ありがとう!愛してる!」

何度同じ言葉を吐いただろう。
分からない言葉を何度繰り返しただろう。
その度どんどん神聖な『愛』すら薄っぺらいものになっていくような気がしていた。

ニセモノの愛を振り撒いた代償はホンモノの愛が分からなくなることだろうか。

「セフナァ、愛って何?愛してるってどういう状態?」

一度、大好きな弟に聞いた。
『分かりません』って答えを期待して。

「好きで、大事で、どうしようもなくなって、言葉で言い表せないような気持ちのことを仕方なく『愛』って言葉であてはめるんだよ、多分。」

彼はそう、少し寂しそうな顔で答えた。

そのとき、俺はとってもとってもガッカリした。

セフンは誰かを『愛した』ことがあるんだ、そう直感した。
ずるいと思った。
誰だろう、セフンに愛された贅沢者は。

きっと彼なら真摯に愛をくれただろうに、ホンモノの愛を。
ニセモノなんかじゃないのを。

「俺も欲しいなぁ」

俺のための、俺だけの。

どうしようもなくなって、爪を噛んだ、血が滲んで痛かった。
でも、痛いって騒いでもセフンがかまってくれるわけじゃないから、一人で黙って洗面所で血を洗って、絆創膏を巻いた。
鏡を見たらバカみたいな顔をした自分だけが居た。

嫉妬に焦燥感に高揚感に虚無感に罪悪感に、劣等感に、恋慕に、限りなく近い言い表せない感情を。
これを愛と呼んではいけないのだろうか。

教えて、セフナ。

2014/05/12(Mon) 20:08 

◆カイ 

俺の唯一の弟は。

俺よりずっとしなやかで、俺よりずっと儚い危なっかしい奴です。

心の端っこでいつもどこかしらの神聖さを感じていました。

いつも彼はあどけない表情で笑い、歌い、踊りました。そして、一人になったときはよく疲れた表情をしていました。きっと危なっかしいバランスであの子は立っているのだと思うと居ても立ってもいられなくなるときがありました。

俺は彼をとても好いていましたが、どうしたいのかよく分からず、いつも少し離れて彼を見ていました。
何をしたわけでも、何を言ったわけでもないのです。
俺はどうしてこのわけのわからない罪悪感に追い立てられるのでしょうか。

2014/05/12(Mon) 07:01 

◆スホ 

僕は酒に弱い。

綺麗な形の瓶を眺めてため息をつく。酒に対する憧れは人一倍で、なんとなく大人の称号のような気がしていた。

まだ憧れが抜けない気がする。もうとっくに大人なのに。

「スホヒョン、飲まないんですか?」

「ああ、あまり飲めない性質でね。」

「へぇ、意外です」

ディオが不思議そうな顔をする。
若干上目遣いになった大きな目が俺を見る。何もそれ以上の感情が読み取れないのは、ディオが少し酔っているせいなのか。

ディオの白い指が黄褐色の液体の入ったグラスを掴む。伏し目がちにそれを見つめて、グラスを傾けて飲み込む姿をじーっと見る。

どこか肌寒い澄んだ空気を思い出させるのはどこかしら漂う我関せずの態度からだろうか。

「ひとくち」

ディオがおもむろに口を開いた。

「え?」

「ひとくち、飲みませんか」

差し出されたグラス。
『ありがとう』と受け取ろうとした瞬間、唇に柔らかいものがあたる感触がした。

「味見、です」

やっぱりこの子は底が見えない。

切磋に浮かんだのはそんな感想だった。

2014/05/11(Sun) 19:32 

◆チャニョル 

恋い焦がれる、とはよく言ったものでそれこそ、自分の心を燻らせているような気持ちで生きている。

何でも話してくれている様な気持ちにさせるくせに、本当は隠し事をしている、そんな男に恋をしている。

「ベッキョン、きっと俺と離れるのさみしくなるだろうね」

「お前が居ないと部屋のスペースが増えるから嬉しい」

ニヤニヤと笑って返された。
どうせ嘘をつくならもっと上手くつくべきだよ。だって今、作り笑いの口の形してる。

「そっか、さみしいのは俺だけか」

「しばらくしたら戻って来れるだろ」

「それは分かってるよ」

でも俺がベッキョンに会えない期間があるのが耐えられないんだよ。心が燻って真っ黒になってしまいそうになるんだよ。分かる?きっと分からないだろう。

今だってその細い手首を掴んで本当の事を言ってくれ、と詰め寄ってしまいそうになる。

ねぇ、お前はどう思ってるの?
どうか教えて、俺にはもう分からないんだ。

「…俺は、ずっと苦しい」

間を開けて、何のことかわからない様にそう小さく呟くのが俺の精一杯の抵抗なのだ。

2014/05/11(Sun) 19:04 

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