鬼徹倉庫
□終 虐待を受けている白澤くんとその隣人の加々知さん
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家に帰ると鍵が閉まっていた。何処かに出かけたのか、それとも僕に入ってくるなという無言のメッセージなのか…‥
家の隅にある花壇を少し上げそこに隠してある鍵を取り出し鍵を開いた。
「ゴクリッ…‥」
手は震え口は乾く。
あまり音を立てないようにドアノブを回す。
「ただいま…」
少しだけ戸を開け、その隙間に体を滑りこませる。閉めるときも極力音を立てないように気をつけながら閉めた。
「お母さん?お父さん?」
物音も声もしない。どうやら出掛けているようだ。
少しホッとしながら靴を脱ぎ室内に入った。
*****
「白澤、降りてこい!」
家に帰ってから数時間。父たちが帰ってきたようだ。
僕は自室でしていた勉強の手を止めて一階に降りた。
リビングにはいると父と母が隣り合わせでソファーに座っていた。
僕は父達の向かいのソファーに座った。
「急遽転勤が決まった。明後日にはここを立つ、荷造りの準備をしておけ」
「え…‥?」
こんな急に?
今までなら1ヶ月と時間はあったのに…‥
「学校には今日はなしに行っておいた」
「あ、あの僕っ…‥」
加々知さんにお別れを言いたい。お礼だってちゃんとしたい。
もっと話がしたい…‥!
バンッ!!
「加々知さんに会いに行きたいのか…‥?」
「っ…‥」
「昨日は一体加々知さんとなんの話をしてきたんだ?もしや、加々知さんにある事無い事言ったんじゃないのか?」
「違っ…‥!」
父が立ち上がる。それと同時に母も立ち上がり隣の部屋に消える。
「ならなぜ会いに行きたがる?!親よりただの知り合いをとるのか!この親不孝者がっ!!」
頬に鋭い熱が走る。足手腹足足手。次々に熱が走っていく。
「いいか?お前は不幸を呼ぶんだ!!疫病神なんだっ!なにが吉兆の印白澤だ…‥真逆じゃないか?!!」
父の口から出る暴言は鋭く僕のなにかに突き刺さる。
「お前が生まれてからずっとずっとずっと!我慢して育ててやったのにお前はっ!!」
我慢…‥してたんだ…‥
僕は疫病神で…‥みんなに不幸を呼ぶ…‥
吉兆の印白澤なんかじゃない…‥
「いいか、次の町では極力人に関わるな。分かったか?」
「はいっ…‥」
何時間耐えていたのか分からない。
でも終わった。
自室に帰りベッドに倒れこむと涙が出た。
朝はあんなにも幸せだったのに…‥なのに今はもう辛いだけ…‥
「ふっ…‥うっ…‥僕は…‥、いらない、子なんだ…‥」