The basketball which Kuroko plays
□takeout
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冬休みもあと一週間で終わり。
塾の講習会の最終日でもあるこの夜空に雪がしんしんと降っていた。
東京の雪は、けっこう珍しい。
ふと思い立って手袋をした手で前を急ぎ足で歩くライバルの少女の肩を叩く。
「ごっつ寒ない?ギリギリ1位やった西園寺さん」
「うわ?!あ、なんだ、ギリギリ2位の今吉くんか」
無自覚な嫌味を言って振り向いた首にはマフラーも巻かれていなかった。
「ライバルに気付いとらんかったんかい。つれへんのー」
「後ろなんか気にしないよ普通…」
はー、とため息をついて下の方に目をやったりんの目が急に輝いた。
「ね、それもしかして手袋?」
…つくづく勉強できる系アホやな、お前は。そう言いたい思いをぐっと堪える。
「もしかしんくても手袋や」
「片っぽ貸して」
「ええよ」
左手を差し出すと嬉しそうにそれを取られる。
冷たい空気に手の火照りが抜けていくようで心地よかった。
「あったかー…」
頬に人の手袋をくっつけてうっとりとした顔をする天才少女。
自分の鼓動が僅かに早くなっているのを感じた。
「…そろそろ駅やしそれ返してくれへん?」
「いやー…なんか今吉くんのにおいいい匂い」
緊張したような表情が完璧に抜け落ちたリラックスモードの顔。
寒さに赤くなった頬も上気してるみたいでなんか色っぽい。
「…手袋ごとテイクアウトするで」
思わず零れた独り言はけっこう大きかったみたいで。
「マックみたいに言わないでー」
と空気を読まない返事をされた。
微妙に恥ずかしくなって半ば奪い取るように手袋を返却させ、もうすぐ来るであろう電車の事も思い出して改札に走った。
1月になってまた塾が始まった。
教室に入るときに一瞬りんの事を思い出した。
隣やったら恥ずかしさで死ねる。そんな事を思いながら座席表を見る。
幸い隣ではなかった。でも近くだったら終わる。
座席表を隅から隅まで見た。
西園寺りんの名前自体がそこに無かった。
「錫村さん」
胸騒ぎを覚えながら彼女と仲の良かった女子に声をかける。
「西園寺さん、何かあったん?おらんくなったけど」
「うん、やめたんだって。塾」
目の前が真っ暗になっていくのを感じた。
「やめた?」
「ほらー、あの子どうせ何にもしなくても頭いいじゃない?だから別にわざわざ来なくても良いって判断したらしくって」
声がどんどん遠くなっていく。
「…今吉くん?」
「ごめん、体調悪なって早退したことにしといてくれん?」
俺は錫村さんの返事も聞かず教室を出た。
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