短編

□プレリュードの後
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ある晴れた日、うさこは、今まで行ったことのない遠い場所に行こうと俺を誘ってきた。


車を出そうか提案しだが、今日は電車でいきたいと言う。


電車の中では、いつものように学校や家族の話をしてくれるが、時折寂しそうに窓の外を見ていた。


着いたところは、郊外から離れた場所で、国立公園だった。

広い草原には花が咲きほこり、大きな桜の木の下に湖があった。



記憶の奥底に眠っていたあの場所。そう、前世で゛キミ゛と過ごしたそこに、良く似ていた。



懐かしい気持ちと切ない気分に襲われながら、ふと君を見ると、俺に近づいてきた。



俺を見上げて、



「どうしても、゛貴方゛を此処に連れてきてあげたかったの私。」



思い詰めた瞳で語る彼女は、゛彼゛に話かけているようだった。



その表情を見た俺は、前世での記憶が鮮明に甦ってきた。



初めて゛キミ゛と会った日。

その後に受けた試練の事を。その時出会った君の事を。



あの時の君は、俺を連れ回し色んな景色や物を見せようとした。

俺を元の世界に戻させないよう必死だった。悲劇の結末を知っていたんだな。



俺はうさこを引き寄せ抱きしめた。



「ありがとう。月野うさぎさん。あの日に行きたいと、言ってた場所に連れて来てくれたんだね。」



目を見開いて俺を見る、うさこ。その額にそっとキスをする。



「あの時うさこが言ってた、湖がある場所ってここだろ?嬉しいよ。

別れる時、俺は言ったよな?また君に恋をするだろうなって。色々あったけど、ちゃんと見つけて、この腕の中に君が居る。」



抱きしめる力を強くする。うさこは瞳に涙を溜めて頷く。



あの後、城に戻れた俺は、試練を乗り越えた者として罪を許された。

勿論、月の住人と会うことを許されたわけではないけれど、絶対に還ってこれないと思われていただけに、特別な力があるよう扱われ、俺に意見するものは減った。



「俺は、幾度もうさこに助けられてばかりだな。前世でも、今でも。」



腕の中のうさこが、大きく首を振り俺を見上げた。



「そんなことない。エンディミオンも、まもちゃんも、いっぱい私を助けてくれたよ。

けど、あの時私が会いに行かなければ、苦しみや戦いの中に貴方を巻き込まずにすんだかも知れない。ずっと謝りたかったの。」



「謝る必要なんかないさ。俺の回りには戦いや争いは既にあった。セレニティーと出会ったお陰で、気が狂わずにすんだんだ。この世でも生きる意味を教えてくれたのはうさこだよ。」



「まもちゃん…。」



「うさこ…。」



見つめ合い、互いを確認するかのように、俺たちはキスを交わした。















〜あとがき〜

カセコレ3をきいて思いついた話。

まもちゃんにあの時の事を思い出して欲しいなぁと思って書きました。

時期は、Rの(魔界樹編の後かな?)
けど、やっぱし文章におこすのは難しいですね。
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