long story:日常in非日常
□3時限目
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えっと…
これはどういう状況?
つい数分前俺は夏芽に呼び出され屋上で話をしていた。
が、とちゅうで乱入してきた桜二郎により夏芽は強制退場。
そして今、俺はフェンスと桜二郎との間に挟まれている。
「柚葵」
耳元で囁かれる聞きなれた声と自分の名前がなぜか妙にくすぐったくてたまらない。
「さっきの答え、教えて?」
いつもよりゆっくりとつぶやかれたその問いかけに、ショートしかけている俺の頭がついていけるはずも無い。
『さ、さっきのって?』
「なにを悩んでんのかってやつ」
『なにって…
そんなの…』
どんな言葉で伝えたらいいのか分からない自分の感情を整理できず、言葉が詰まる。
「なあ、難しく考えんなよ。簡単だろ?
さっきなんですぐに突き放すって言えなかったんだよ。なあ、お前の言葉で理由聞かせろよ」
相変わらずの命令のような口調が、なぜか今日は俺を安心させた。
それなのに、さらに近づいた距離に心臓は跳ね上がり鼓動が早まる。
簡単にって…
あのとき、嫌だったこと。俺が耐えられないと思ったこと。
そんなのひとつしかないだろ。
『お、お前が。桜二郎が俺のそばからいなくなんのが嫌だったんだよ!!』
余裕をなくした俺の口から出た本音に桜二郎は目線を外して俯く。
しかしそれも一瞬のことで、すぐにまた視線を戻すと、力強く、なのに困るくらいに慎重に俺の体を抱きしめた。