ミックスCP

□及川さんが一番です
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国見は月島の手元を無言で見つめた。
コイツにだけは「やる気がない」と言われたくはなく、中学時代のあれこれについても無関係なのだから、口を挟んで欲しくはない。

「あのさ、コーヒーショップにまで来てストロベリーフラペチーノってどうなの?コーヒー頼まないなら、外で待ってれば?」
「メニューにラインナップされてるのに、頼んじゃいけないワケないじゃん。バカなのキミ?」
「バカじゃないよ、少なくとも影山よりは頭いいし」
「王様クラスのバカだったら、こんなトコにいないでしょ?」
「どういう意味?」
「博物館とかで天然記念物として陳列されてるってこと」

国見と月島に共通する話題があると言えば、影山のことに尽きるだろう。
それは分かっていながらも、自分をバカの代名詞のように語るのはやめて欲しい。
どちらも声が小さいから周囲の注目を集めておらず、それがせめてもの救いではあるが、本当にどうしてこういう日に限って及川が遅刻するのかと、今度は別の方向に恨みの矛先を向けてしまう。

何となく相容れない相手というのは、本当にいるのだなと、国見も月島も同じことを考えていた。
ただそこにいるだけで気に入らない。
自分と同じ空間に身を置いて欲しくない。
できることなら自分の視界に入らないで欲しい。
だから2人は互いにこの店から出て行かせようと、頭がいい者同士ならではのネチネチとした言い合いを勃発させることにした。

「影山、こういうヤツとチームメイトになるの、やめといた方がいいよ」
「え……な、なんでだ?」
「だって明らかに性格悪そうじゃん?まだ俺とか金田一の方がマシだって思う」

それはどうかなと、影山は内心訝った。
似た者同士だからこそ月島と好意的に接することができない国見の気持ちは理解できなくもないが、果たして月島の性格がそこまで悪いなどと、チームメイトでもないのに言い切れる根拠が分からない。

「僕にはキミの方が最悪かなって思えるよ。アマ●ンとかの口コミに、最悪の評価書いて喜んでる感じ」
「はあ?そんなことしてないし」
「してるかどうかじゃなく、やりそうだって言ってるんだけど?」
「そういうの、お前の方がやりそうじゃない?星一つしかあげないクセに、悪口だけは長いヤツ書いてんの、絶対お前だと思う」
「残念ながら僕はアマ●ンは使わないんだよね。どっちかって言うと楽●派」

アマ●ン派でも楽●派でもいいから、誰かコイツらを黙らせてくれと、影山は切に思う。
どうしてほぼ初対面なのに、ここまで相手のことを悪く言えるのか、心から不思議でならない。
しかも2人ともボソボソと喋っているので、どこか陰険な空気さえ漂っている始末だ。

「お、お前ら……ちょっと黙ろう……な?」
「はあ?王様さぁ、僕が一方的に言われてんのに、加勢しようって思わないワケ?今のチームメイトより過去のチームメイト優先なワケ?」
「ホント、バカだよねぇ、お前?影山はお前なんかチームメイトとして認めてないって言ってんの、分かんないんだ?その証拠に俺は向かいの席に座ってるし」
「それどういう意味?」
「向かいの席がオッケーってことは、『顔見ても許せる』ってこと。隣しかだめって言うのは、即ち『俺の視界に入ってくんな』ってことじゃん。影山だって折角の休日にイヤミなチームメイトの顔なんて見たくないんだなって、今ハッキリ分かったよ」

いやいや、その言い分はおかしいだろうと影山は激しく慌てる。
そもそも国見は勝手に向かいに座っているのであり、月島はたまたまどこにも座る場所を見付けられず、やむなく影山の隣にいるだけだ。
そこに顔を見ても許せるとか、顔も見たくないなどという影山の思惑など一切介在していない。
それにイヤミのレベルは月島も国見もほぼ互角で、月島より自分の方がイヤミじゃないとうそぶく国見の脳内はどうなっているのかと問いたい。

「はぁ……こんなヤツとチームメイトだったんじゃ、そりゃ王様にもなるね」
「はぁ……こんなヤツとチームメイトやってたら、そりゃ影山も丸くなるよ」

そして最後に必ず影山の話題に着地するのも、やめてもらいたい。
というか及川はまだなのかと携帯をコッソリ見れば、「あと5分で着くから」と書いてあり、どこかホッとするのだった。
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