【少年未来大革命論】

□4.『天使のような少女』
4ページ/5ページ

その少年はどこからともなく炎を浴びた剣を取り出し、素早くその赤いコウモリを切り裂いた。
……切り裂かれた赤いコウモリは、すかさず灰となって地面に落ちる。


「……ありがとう、リリィ」
「こ…これは一体……!?」
「大丈夫ですか?豪炎寺さん…今、傷を治しますね……」


彼女は豪炎寺の傍に行き、腕の傷にそっと触れる。
すると触れた傷が淡く光り、跡形も無くそれは塞がり治っていった。


「これは…傷が……」
「良かった…ありがとう、女神様」
「もう…私は女神なんかじゃありませんよ」


傷が治ったのを見て、安堵する風丸。
未だに『女神』と呼ぶ風丸を見て、彼女は苦笑した。


「風丸、不動…これはどういう事だ?お前達と生徒会長はどういう関係なんだ?」
「えっ……」
「豪炎寺、お前…俺達の話、聞いてやがったな?」


無口になる豪炎寺。図星のようだ。
どうやら風丸の事を心配してこっそりついて来たらしい。


「………生徒会長」
「…はい」
「俺は風丸に助けられ、生き返ったというのか?」
「ええ、そうですね……」
「………」


豪炎寺は話の初めから聞いていたようで、複雑そうな顔をして俯いた。
それはそうだ。助けようとした相手に、まさか自分が助けられるなんて思ってなかったのだから。


「……話を戻しましょうか」
「…あぁ、続けてくれ」
「ここにいるリリィも、希望を願った者。しかし代償として、こうやって『魔』…『呪い』と戦う運命となりました」


……風丸と不動は『リリィ』と呼ばれた少年を見つめる。少年は目隠しをしていて、表情はうかがい知れない。彼が持っていたはずに剣は、いつの間にか消えている。
彼は少女の前に近寄り、ゆっくり跪く。


「そう…希望を願い、呪いを受け止め、戦い続ける人間達。それが………―――



『天使型(エグリゴリ)』と呼ばれる者達……」


―――その後、三人は少女に連れられ、彼女の住む屋敷へ。
本来ならば豪炎寺は家に送るはずだったが、豪炎寺は「俺も行く」と言って聞かなかった。


(豪炎寺には、一番知られたくなかったのにな…)


……落ち込む豪炎寺を励ましながら、風丸は内心そう思っていた。

彼女の住む屋敷は、『屋敷』というよりも『お城』と言っても過言ではないほど大きかった。
話を聞くと、中に神殿や教会もあるそうだ。
この少女は一体何者なのか……。


「送って下さってありがとうございます、『ブランカ』さん」
「いえいえ、お嬢の送迎は僕の仕事の一つですから」


少女と風丸達を屋敷に送ってくれたのは、『ブランカ』と呼ばれる青年だ。
黒髪でモノクルをかけていて、温和そうな雰囲気だ。


「………」
「どうした不動?」
「あの男…ただの運転手じゃねぇな」


不動は青年をじっと見つめ、目を細める。
……不動にしか分からない何かが、あるのかもしれない。


通路を通っていると、また別の青年に会った。
前髪が短い黒髪で、毛先が白い。
おまけに黒い眼帯を付けているから、近寄りがたいオーラを放っている。


「ただいま帰りました、『サレナ』さん」
「……嗚呼」
「今日も屋敷を守ってくれて、感謝していますよ」
「当然」


少女からの受け答えにも淡々としている。
すると、風丸達の後ろに居たリリィがその青年に駆け寄り、ぎゅっと抱きついた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ