【少年未来大革命論】

□4.『天使のような少女』
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「ごめんなさいね、サレナさん。リリィが甘えん坊で……」
「……構わぬ。リリィ、怪我は無いか」


青年はかがんで、リリィの頬を撫でる。
リリィはこくんと頷き、その手に擦り寄る。


「…?この、血は」
「あぁ、先程倒したコウモリの血ですね…」
「……お嬢、今からリリィを風呂に入れても構わぬか?」
「ええ、勿論」


青年は抵抗しないリリィを抱きかかえ、どこかに行ってしまった。
それを見て、少女は微笑ましそうに見つめる。
すると、ずっと黙っていた豪炎寺が、重い口を開いた。


「……あの二人は、仲が良いのか?」
「そうでもありませんよ…ですがサレナさんは、リリィの事を弟のように面倒を看ていますね」
「弟……」
「あ。でも、天使型としてはリリィの方が上です。リリィは忠実ですが、サレナさんは独断で行動しようとするので」
「まるで昔の不動だな……なぁ?」
「おい豪炎寺テメェ何でそこで俺が出る」


不動が豪炎寺の胸ぐらを掴もうとするのを、「まぁまぁ」と慌てて風丸が止める。
不動は豪炎寺を睨むも、当の豪炎寺は気にしておらず、屋敷の高い天井を見上げていた。


「そんな事より…教えてくれ。貴女が何者で、何故ここ…稲妻町に来た理由も」


そう言って、豪炎寺は真剣な眼差しで少女を見つめる。
少女は屋敷の中を案内しながら話した。


「……『聖サンタマリア学院』について、簡単に説明しますね。表向きはスカウト制のエリート一貫校…しかし本当は、『天使型の人間達の育成機関』なんです」
「育成機関……!?」
「神話などの知識面中心の授業を専門的に行い、その他は体育といった普通の学校と何ら変わらないカリキュラムとなっていますけれどね……」


ぴたり、と彼女は大きな扉の前で足を止めた。
彼女が扉に軽く触れると、扉はゆっくりと開く。

―――その中は教会だった。
教会の奥にある祭壇。大きなステンドグラスには、球体のような何かを抱きしめている女性が描かれている。


「……この育成機関を設立したのは、私の祖母です。育成機関といっても、知る人は…同じ天使型の皆さんや、天使型と関わりを持っている方だけですけれどね?」
「…影山サンなら知ってそうだな」
「あぁ、彼は一般人でしたが…この学院の卒業生ですよ」


『卒業生』…その言葉を聞いて、風丸は思わず声を上げて驚いた。
風丸が持っている、影山が遺した黒い手帳。
夢の中で影山が遺した言葉。
彼女が風丸達の前に現れた事。
『聖サンタマリア学院』と言う名の育成機関。
繋がりなど全く見えないが、風丸にはなんとなくそれが繋がる気がした。


祭壇の方に足を進め、彼女はふわりと髪をなびかせ、聖母のような微笑みを浮かべ振り向いた。


「では……改めて、初めまして。私の名は『神王宮 美月』。聖サンタマリア学院の生徒会長にして、天使型達を統率する者……」


彼女は一瞬目を閉じ、また目を開く。
すると、今まで穏やかだった瞳が一転、鋭い闘志を帯びた瞳に変わった。


「私がここに来た目的、それは…『天使型の素質を持つ選ばれし者を、聖サンタマリア学院に招き入れる事』……」
「選ばれし…者…」


そしてまた、彼女は目を閉じ、開く。
いつもの穏やかな瞳で、彼女は微笑む。


「風丸一郎太君。不動明王君」



「私と共に祈り、契約を交わし…『天使型』になってくれませんか?」



…続。
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