【少年未来大革命論】

□5.『姉と呼ぶ君と』
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「修也、風丸君。昨日は帰りが遅かったそうだな」


退院後、風丸は豪炎寺の父の説得によって、豪炎寺家に居候する事になった。
豪炎寺の妹、夕香も「お兄ちゃんが二人になった!」と喜んでいる。


「あ…えっと……」
「今雷門中に来てる、聖サンタマリア学院の生徒会長にお呼ばれしてしまって……」
「あの綺麗な人か…門限などとうるさい事は言わないが、夕食の前にぐらいは連絡しなさい」
「「すみません……」」


風丸と豪炎寺は昨日の出来事を振り返る。
突然現れた少女『美月』と、謎の化け物。
希望を願い、呪いを受け止め戦う者、『天使型』。
『聖サンタマリア学院』と言う名の、『天使型の育成機関』。
そして、風丸と不動が天使型に選ばれた事…。
どれもこれも信じがたいことばかりで、二人はまだ受け止め切れていない。


「…風丸お兄ちゃん、大丈夫?」
「えっ?」
「朝ごはん、食べないの…?」


また考え事をしていたせいで、夕香に心配される風丸。「大丈夫だよ、ごめんな」と言って、風丸は朝食を食べ進める。


「……ごちそうさま」
「時間だ、風丸。行くぞ」
「お兄ちゃん達、いってらっしゃい!」
「あぁ、行って来るよ夕香」
「「行ってきます!」」


二人は身支度を整え、外に出た。
今日は、学校もサッカー部も休み。
行き先はもちろん…彼女の屋敷だ。


「おっせぇぞ、お前ら」


待ち合わせ場所には、すでに不動が居た。
「ごめんな!」と風丸は謝り、不動にバナナ味の板チョコを手渡した。
三人でしばらく待っていると、目の前に高級車が停まった。


「おはようございます、皆さん。迎えに来ましたよ」
「あ…ブランカさん!おはようございます!」
「さぁ、乗って。お嬢が待ってますよ」


微笑むブランカに言われ、三人はさっと乗る。
…運転中も一切笑みを崩さないブランカ。
彼を不審に思っている不動は助手席に座っているので、後ろに座る二人は妙に緊張した空気を感じ取る。


「あの…ブランカさん」
「何ですか?風丸君」
「ブランカさんも…天使型なんですか?」
「そうらしいです。数ヶ月前に、お嬢にスカウトされて…今に至ります」


ブランカに話を聞くと、ブランカ自身としては「まるで夢を見ているようだ」と言う。
……すると、彼はどこか寂しそうな笑みを浮かべた。


「僕は夢を見て…目が覚めると、お嬢とリリィがいたんです」
「夢……?」
「っていうか、リリィは最初から居たのか」
「はい。そして僕が聖サンタマリア学院に来て数日経ってから、お嬢がサレナを連れてきたんです」


僕もサレナも、まだまだ新人なんです。
そう言って、ブランカはけらっと笑った。
不動はそれを見て、彼を哀れむような顔をした。


一時間ほどして、ようやく屋敷に着いた。
出迎えてくれたのは、リリィとサレナだった。


「―――ようこそ、お嬢の屋敷へ」


リリィとサレナには、ブランカのような柔らかい雰囲気はなく、どことなく近寄りがたい。
思わず風丸は二人に会釈した。
そんな風丸に、サレナが口を開いた。


「……風丸一郎太」
「は、はいっ…」
「……お嬢に疑心暗鬼を抱くな。死ぬぞ」


三人を睨み、「従わねば、殺す」とサレナ。
その言葉に一瞬怯える風丸と、睨み返す不動と豪炎寺。
それを見たブランカが、サレナをなだめる。


「こーら、やめなさいサレナ。リリィが怒っていますよ?」


リリィは、サレナの袖をぎゅっと掴む。
サレナは一瞥して、リリィを抱き上げた。


「……言っておくが、リリィは言葉を話せん」
「え………」
「お嬢によれば、もうじき喋れるという。リリィは貴様らを気に入っている。……傷つければ、容赦せん」


そう言って、サレナとリリィは屋敷の中へ。
……リリィを大切にするが故の、言葉だった。
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