【境界ドールSTILL】

□00:幸せ者
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――近未来都市『トウキョウZ区』。


「行くよ!シロ!」
「…わーった」
「もうっ!早く急いで!!」
「…あんまり引っ張んな、タマ」

タマに腕を引かれ、支部へ向かう。
またガーディアンのミッションがあるとかで。
…あのアルバートを倒し、四ヶ月経った今でも、ノラブレによるミスティッカー犯罪は一向になくなる気配を見せない。

このミスティッカー犯罪に対抗するためのブレイザー達の自衛組織が『ガーディアン』。
俺とタマはその支部の一つ、『フェンリル支部』に所属している。

今日もそのミッションが本部から送られてきたらしいんだが、この幼馴染は妙に急いでいる。

「シロ、ごめんね…」
「あ?」
「あれから一週間しか経ってないのに…無理言って…」

……あぁ、『あれ』のことか。
俯くタマに、俺は笑う。

「タマ、言ったろ?俺は平気だ」
「でも…」
「俺には皆がいる。それに、お前もな」

そう言うと、タマは少し悲しそうに笑った。
もしかして俺は笑えてなかったかもしれない。
…精一杯、笑ったつもりだけどな。
確かに辛かったけど、皆がいたから平気でいられたんだ。
だから嘘は一切ついてない。


――『ガーディアン フェンリル支部』。


「おはようございます!」
「よう、タマキちゃん…おっと」
「…久しぶり、ジョナサン」
「…随分とご無沙汰じゃねえか、シロウ」

支部長室で愛読のピンパラ通信を読んでいたジョナサンも、雑誌を机に置くなり、俺の顔を心配そうに見る。
フェンリル支部の支部長にしては、割と珍しい表情だった。

「もう出ても平気か?」
「いちいちヘコんでらんねーって!」
「そうかい?強いねぇ」

頭を掻きながら、だが無理はするなよ?と励まされる。
支部長室から出ると、そこにはシュンヤとアップルの姿があった。

「シローーーウ!!」
「あっ、タマキさんにシロウさん!」

二人は俺の元に走ってくるなり、励ましの言葉をかける。

「早速だけどアンパン買ってこい、シュンヤ」
「復帰して早々またこのパターン…!」
「アップル、シロウにいい子いい子してあげるね!!」

アップルに言われ、俺はしゃがんで頭を撫でてもらう。

「……ん。サンキュ」
「この扱いの差はなんだろうか…」
「あっ、ついでにコーヒー牛乳もな」
「なんだか、いつものシロに戻ったみたい」

呆れながらも安心してくれたシュンヤとタマ。
そしてラウンジに向かうと、ヤイバやクロキ、そしてミソラやダイチもいた。

「やあ、シロウ君!!」
「…お前誰だっけ?」
「いやいや!皆の大好きなお兄さんだよ〜」
「クロキなんて人知らねーな」
「ガーーン!!!」

…この男の反応も久しぶりに見る。
すると、呆れたように傍観していたヤイバが俺に言う。

「…シロウ、もう平気か」
「お、ヤイバ」
「復帰祝いだ、何かおごってやる」
「たまには先輩らしい事するんだなー」
「優しー、じゃあお兄さんにも…」
「…Who is?」
「へっ?」

…見ないうちにヤイバも、クロキの扱いが分かってきたようだ。
ただし、相変わらずの英語交じりの口調のせいで、いまいち伝わっていない。

「で、何しに来たんだよ、ミソラ、一本角」
「な、相変わらず可愛くねぇぇぇ!!」
「こっちだってアンタの事心配してたのよ」
「…心配かけて悪かった、ミソラ」
「…おおぉい!俺だってお前が心配で…」
「で、ブレイザー訓練の方はどうだ?」
「順調、順調!」
「二人してこの俺を無視かい!!」

ダイチとは久々の対面でも喧嘩腰なのは当たり前だ。
コイツのサポート役のミソラは、そんな俺達を見てため息を吐く。


すると、ミソラが黒い帯のついた封筒を出す。
そこには、『御霊前』という文字が書かれていた。
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