【境界ドールSTILL】

□03:目眩象る
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「…実はな、『グランナーク』に動きが見られるとNEXTから連絡があった」
「グランナークが…!?」

ジョナサンに呼び出された俺は、『グランナーク』の話を聞かされた。

『グランナーク』…こちら側と、向こう側の世界を繋ぐ扉。
その向こう側の世界の力を手に入れようとした宿敵、アルバート。
そのアルバートを倒し、向こう側へ繋ぐ扉を閉じる事で、事は丸く収まった。

……そう、ペッタンと引き換えに…。

しかし…NEXT社が厳重に管理、及び監視していたグランナークに動きがあったなんて。
…エネルギーゲートもナシに起動しようとしているのか!?

「お前さんが来とらん間も、グランナークだけでなく『トライアンフ』にも動きがあってなぁ…」

そう言って考え込むジョナサン。


…俺はかつての事を思い出すので精一杯だった。
向こう側の世界の存在で、アルバートにとっては『鍵』であったタマとペッタン。
敵対していた、ツルギ、カレン、コウタ、ビースト。そしてアルバート。
戦いの中で自分自身の弱さを思い知らされ、全てを諦めかけた事。
…そして、誰かを守る為の『強さ』の意味と、仲間との絆。

「…俺もあれから強くなったもんだな」
「はは、確かにな。今では立派なSランクブレイザーだ」

かつての事を思い出しながら、俺とジョナサンは笑った。

――だがそう笑ってもいられない。
あのグランナークが再起動し、またこちら側の世界と完全に繋がってしまったら…今度こそ、終わりだ。
そんな事態にさせるわけにはいかない。

「まぁそのグランナークについてなんだが…今度お前さんにグランナークを確認しに行ってもらいたいと思ってね」

つまり、ジョナサンが俺を呼び出したのは、『グランナークの確認』の任務を、この俺に頼みたかったってワケか。
断るわけにはいかないな、こんな重要な任務。

「…あぁ、別に良いぜ」
「助かるよ。その時は改めて呼び出すからな」
「任せとけって!」

最近はあまり重要な任務を任されていなかった。久々に頼られるのは、少しだけ嬉しい。
そう思い、俺は得意気に答えた。


「――ジョナサン。そのミッション、俺も一緒に行こう」

後ろから声が聞こえて、思わず振り向いた。
聞き覚えのある声。そう、アイツだ。

「……ヤイバ」
「今の状態のシロウに任せるのは俺としては不安だ」

ヤイバは俺に近付いて、真剣な眼差しで見つめてくる。
その様子に何かを察したのか、ジョナサンは頭を掻きながら苦笑した。

「くはっはっは…別にかまわんよ、一緒に行ってやれ」
「おいジョナサン、俺は別に…」
「“NO”とは言わせない」
「………」

納得がいかないものの、俺は心のどこかで安堵してしまった。
…あまり心配されるのも、どうかと思う。
…複雑だ。

「しかしヤイバ、あんまり甘やかすのもどうかと思うぞ?」

…どうやらジョナサンも同じように考えていたらしい。
この支部長は、本当に切れ者だ。
ブレイザーとしての才能を見極める眼だけでなく、仲間である俺やタマ達の事も、誰より早く変化に気付く。

…いや、違う。この場合は『誰が見ても』分かる事だ。

今まで俺とヤイバは、いつも一緒にいるほど仲が良かったわけではない。
何より、ヤイバが。
単独ミッション狂である、あのヤイバが、だ。
この俺から片時も目を放さない、ミッションの時も常に一緒。
おまけに毎回家に泊まるほど親密になっている…とくれば、誰だって驚くのも無理はない。

「…甘やかしているつもりはない」

そう言いながら、俺の頭を撫でるヤイバ。

「っうわ!!ちょ、バカやめろ!!」

いやいや嘘だ、甘やかしてるつもりないとか絶対嘘だコイツ!!

「ほどほどにしておけよ〜?」
「止めろよオッサン!!!」

…ちなみに、こんな事を言うのはジョナサンだけではない。
タマ達も『今日も雨が降る』と言わんばかりの視線を送ってくるほどなのだ。
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