【少年未来大革命論】

□2.『巻き戻してくれ』
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――ハッと目を覚ます。
見渡すとそこは、質素で小奇麗な、俺の部屋。

「……夢?」

何だ、夢か。そう思い、胸を撫で下ろす。
それにしても、随分とリアルだった。あんなのは、夢でも現実でも御免だ。
起き上がり、窓を開けると、まだ涼しい夜更け。


「サッカー部に戻ってきたときも、元気付けてやってくれよ、鬼道」
「ああ……」
「………………え…?」

――この二人の会話に、違和感を覚えた。
それに三人で会話している事にも、道路が近くにある事も。
その時、すぐに思い出されるのは…夜更けに見た、あの夢。

夢だったハズだ、ただの夢だった。
だけど、今の状況が夢の内容とそっくりで。
暑いのに、ぞっと寒気がする。
――何となく、嫌な予感がした。

「…なァ、河川敷行かねぇ?」
「は?不動から切り出すなんて珍しいな」
「…まぁな」

…二人を、この場所から放そう。
そうしたら、夢の内容とは違うから、嫌な予感は消える。万が一、ってなっても大丈夫。大丈夫だ。
あんな嫌なもの、見なくて済むんだ。
そう思って、三人で河川敷に向かおうとした。

――その時。

「きゃあああああああぁぁ!!」

どこからともなく聞こえる、誰かのつんざく悲鳴。
その直後に聞こえる、ドスッ、ドスッと、何かが突き刺さる、重い音。

「不動、佐久間、危ない!!!」

鬼道はそう言うと、ドン、と俺と佐久間を突き飛ばした。

「うわっ!鬼道!?」
「!?何…」

何すんだ、と叫ぼうと、振り向いた瞬間。
…鬼道の腹を、ドスッと鉄柱が突き刺さり、貫いていた。

「き…どう…!?」
「――――――ッ!!!」

そう、この重い音は、落下してきた鉄柱の音だった。
それも、鬼道だけじゃない。
つんざく悲鳴を上げた誰かも、周りにいた大人たちも、皆。
振ってきた鉄柱に貫かれていた。

無事なのは、鬼道に突き飛ばされた俺と佐久間だけだ。

「鬼道、クン…?」
「鬼道、返事しろ鬼道ッ!!」

佐久間が駆け寄り、鬼道の身体を揺するが、既に鬼道には意識がない。
鮮血と、その甘い香りは、あの夢と同じだった。

――何で。夢だろ?なぁ夢なんだろコレ?覚めろよ、頼むから覚めてくれよ。

俺も鬼道の傍に駆け寄ろうとしたとき、誰かが俺の前に立ちふさがった。
ふわりとした灰色の髪、赤と青のオッドアイ。
それは夢の中で、俺を嘲笑ったあの――。

「……ぁ…ぁあ、」

肩を掴まれ、またあの時と同じように、男は俺に笑いかけた。
それと同時に襲ってくる、目眩と耳鳴り…。


 * * *


「…………ッ!!!」

目を覚ますと、そこは俺の部屋だった。
…夢…んなワケない。コレは夢じゃない。
鮮血の甘い香りと、あの男の嘲笑うかのような笑み。

「……本物だ…本当にあった事だ!」

俺は混乱する頭を抱えた。

二人を。
俺の大事な仲間を。
鬼道と佐久間を………助けないと。
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