【少年未来大革命論】

□4.『天使のような少女』
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「………女神様……」
「…………風丸?」


無意識に心の声を漏らしていた風丸。
ハッとして口元を片手で抑える。
その様子に、少女はくすくすと笑う。


「一郎太君、私のことを覚えていてくれたのね」
「あっ…当たり前ですよ!」


風丸は少女の下に駆け寄り、少女を見つめる。
豪炎寺達は、何の事だと顔を見合わせていた。


「改めて、初めまして。私の名は『神王宮 美月(しんおうみや みづき)』…よろしくお願いします」


少女は深々とお辞儀する。
長い髪がさらりと揺れ、優しく甘い香りが風丸を包む。


「……風丸 一郎太です」


こちらこそよろしく、と風丸も頭を下げる。
豪炎寺も名を告げ、同じようにお辞儀する。


美月と名乗る少女は、風丸と同じクラスで授業を受けることになった。
才色兼備な彼女は、風丸が分からない難しい問題も簡単に説明して解いて見せた。


「こうやるんですよ。覚えておきましょうね」
「あ……ありがとうございます」


体育の授業は体力テストだった。
体力がわずかに落ちた風丸にとって、いくつか悔しい結果が出てきたのは言うまでもない。
その時、他の男子や女子がざわついていたので、風丸は気になってそこに言ってみた。

その中心には、走る彼女の姿が。


「陸上部にも入ってないって話だぜ?」
「嘘だろ!?俺達男子より速いじゃん」
「すっごい柔軟だし、シャトルランも一番じゃない…かっこいい…」


(運動神経も抜群なんだな…あの速さ、俺でも追いつくのがやっとだ……)


彼女の速さに、無意識に見とれる風丸。
自分と同じように束ねた金の髪が風に揺れる。
……ふと、彼女が風丸の方を向いて、柔らかく微笑んだ。
その微笑に、風丸の顔はほんのりと蒸気した。


そして、久しぶりのサッカー部。


「美月さん、頑張って下さいね!」
「はい…!豪炎寺さん、一郎太君、お手柔らかに」
「あ、あぁ……」


円堂達は、風丸と豪炎寺ペア対少女で勝負させる、という暴挙に出た。
お姫様のように礼をする彼女に対し、少し戸惑う風丸と豪炎寺。
…しかし、その戸惑いが油断となった。

ピー、とホイッスルが鳴る。
するとその瞬間、豪炎寺の足元にあったボールは少女によって奪取されていた。
追いかけるも間に合わず、そのまま少女が華麗にボレーシュートを決めた事で、1点をあっさり奪ってしまった。


「なっ……」


あまりの事に、豪炎寺と円堂達は呆然とする。
体力テストの時、あの身体能力を見ていた風丸はあまり驚かなかった。


「…俺達が退院するまで、それを隠してたんですか?」
「いいえ…皆さんのサッカーのやり方を真似して、今日でやっと覚えられたんですよ」


そう言って彼女は困ったように微笑む。


(なんて学習能力の高さだ……)


風丸は、面白い…と舌を巻く。
勉強も身体能力も抜群。これほどの逸材、そうそう見つからない。
『聖サンタマリア学院』の生徒会長に、これほど相応しい人物はいないだろう。
そんな事を考えていると、後ろから聞き覚えのある声がした。


「なかなかやるじゃねェか、女神様」


振り向くと、そこには不動がいた。
私服だが、今日は帝国学園に行ってないのだろうか。それとも、部活を休んでこちらへ来たのか……。


「…二人の様子を見に来たんですね、明王君」
「当たり前だ。退院したばっかだろ?」


顔を合わせ、少女と不動はふっと笑う。
豪炎寺達は顔を合わせ、何事かと不思議そうにこちらを見つめる。


――皆に、『彼女とは病院で出会った』とはさすがに言いづらい。この事は黙っておくに限る。
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