【少年未来大革命論】

□5.『姉と呼ぶ君と』
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昨日の出来事。
三人はあの後、美月の部屋に招かれた。


「綺麗な部屋だな…入って良いのか?」
「遠慮しないで入ってください。ろくにおもてなしの準備も出来ておりませんが……」


クイーンサイズのベッドにはレースの天蓋。
ベランダに続く大きな窓と、ベッドの近くにある普通の窓に薄桃色のレースカーテン。
棚には、花やキャンドルが飾られている。
白を基調とした、女の子らしい部屋だ。


「……さすがお嬢様、といったところか」
「このケーキ、美味しいな…!」
「ありがとうございます。材料がそろっていて良かった…」
「アンタの手作りなんだな…この紅茶は?」
「アールグレイに、オレンジとはちみつを合わせてみました」


この人は勉強や運動が出来るだけでなく、料理までそつなくこなしてしまうのだ。
彼女の作ったパウンドケーキと紅茶をいただいて、只者ではないと三人は悟った。


「女性たるもの、料理も完璧でなくてはいけませんからね」
「……雷門のお嬢様も、貴女を見習ってほしいものだ」
「それは激しく同意だな」
「アイツそんなに料理下手なのかよ」
「「あれは地獄の食べ物だ」」
「お前ら何があった…」


他愛ない話をしていると、美月は楽しげに笑った。それを見て、何故か三人は安堵してしまう。少女は紅茶を一口飲んで微笑み、本題に入った。


「――選ばれた以上、貴方たちにとっても人事ではありませんからんね。ある程度の説明は必要かと思って…」


そう言って、美月は胸に両手を置く。
すると胸が光り出し、中からハートの形をした宝石のような物が出てきた。
彼女はそれを両手に乗せ、三人に見せた。


「綺麗だな、それ……!」
「これが『ソウルクリスタル』。選ばれた者が、契約によって生み出す宝石です。力の源であり、天使型である事の証でもあります」


彼女の持つ、透明なソウルクリスタル。
光を反射して七色に輝いている……。


「契約…って何だ?」
「私は、選ばれし者の心を『具現化』する事が出来ます。分かりやすく言えば…人の想いを現実にする、と言ったところでしょうか?」


風丸と豪炎寺は、意味が分からず考え込む。
すると、不動が目を見開き少女を見つめた。


「それって…『願いを叶える事が出来る』って事か?」


概ねそうなりますね、と彼女は微笑む。
やっと理解した2人はこれでもかと驚いた。


「ただし、選ばれし者の因果によって、叶えられる願いは限られます。例えば『人を生き返らせたい』のであれば、相当の因果を背負わなければなりません」
「そうか……」
「一朗太君、明王君……貴方達のその願いは、既に成就されているのです」


風丸の願いは、『豪炎寺を生き返らせる事』。不動の願いは、『時間を巻き戻し、鬼道と佐久間を救う事』。彼女の力無くして、自らの心を具現化し、その力を駆使するのは……卵の中で成長する雛と同じ。だからこそ、彼女との正式な契約が必要だと三人は教えて貰った。


「あの時は突発的に願ったからな……」
「俺もだ……」
「今からでも契約は出来ますよ。心の形は、日々変わっていくものですから」
「そう、か……なら、良かった」
「でも、それと引き換えに出来上がるのがソウルクリスタル。これを手にした者は、数多の魔と戦う使命を課されるんです」


そう言うと、彼女は自身のソウルクリスタルを見つめる。


「祈りから生まれるのが天使型とすれば、魔は呪いから生まれた存在です。過剰な不安や、怒りや憎しみ……そういう災いの種をもたらしているんです」


理由のはっきりしない自殺や殺人事件は、高い確率でその呪いが原因。
形の無い悪意となって、人間を内側から蝕んでいくのだ、と美月。
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