Haruka

□俺と水
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あの頃、四人で取ったトロフィーが目に入る
俺はソレを拾い上げると、棚の上に置いた

「…」

最近、俺は水が理解できない
水が俺を受け入れない

受け入れて無いのは俺か?

なんにせよ…

「俺は何の為に泳いでいるんだ……?」


。。。

「…ハル……ハルっ!!」

「!!」

「もぅ!!ハルちゃん、リレーの練習なんだから!!」

渚が俺の前で飛び跳ねながら抗議している
真琴は渚を止めながら俺に台から降りるように促す
怜は俺が止めてしまったせいでプールの中にいた

「…遙先輩、大丈夫ですか?最近…そんなことばかりですが……」

「…あぁ……悪いな、怜にまで心配かけて…」

「いえ、全然…」

怜は腕力でプールサイドから上がり、タオルで髪を拭いている

俺はゴーグルを付け、水へと飛び込んだ

でも

やっぱり、水は俺を受け入れてはくれなかった

「ハル…」

俺は水に受け入れてもらおうと必死に泳いだ
そんな俺を真琴が見ていたことを俺は知らない

。。。

「ハルちゃん、マコちゃんおっさき〜!」

「お疲れ様でした」

渚と怜が部室を出ていくと二人きりの空間となり、静寂に包まれた
俺は淡々と着替えを済ませ、椅子にドサリと座ると、ジャケットを羽織る真琴をチラリと見た

「?」

真琴は俺のそんな一瞬を見逃さず、ニコリと首をかしげながら俺を見た

「………なんでもない」

部室の鍵を閉め、真琴と並んで海沿いの道を歩く
ソーダアイスをくわえながら

「ハルさぁ〜…」

「?」

「最近、気持ちよさそうじゃないね…何かあったの?」

さっきと同じ
いつもと変わらない笑顔で話しかけてきた真琴
隠し通せてると思ってた
だって、真琴はずっと何も言ってこなかったから
だけど、やっぱり真琴は気付いてた
それが嬉しいような、申し訳ないような
俺は不思議な気持ちになった

「泳ぐの……楽しくない?」

「違う…………………」

キッパリと否定したものの、後の言葉が続かない
黙った俺に真琴が尋ねた

「凛と山崎くんのこと………かな?」

「!!」

「図星だね、ハルはすぐ顔に出る」

クスクスと笑う真琴を睨み付け、はぁとため息を付いた俺は浜辺に座り、海を見ながら話し始めた
隣に真琴が腰を下ろすのを待ってから

「四人で獲ったトロフィーあるだろ?」

「うん」

「あれを見て思ったんだ……俺は何の為に泳いでるんだろうって」

「………」

真琴は一瞬、口を開けて呆けた顔をしていたが、すぐに笑い出した

「笑うな」

「ごめんごめん……ハル、リレーの予選の時もそんな事思ってたでしょ」

「何故分かる……!」

「フフ…ねぇ、ハル………凛に会いに行かない?」

「凛に?」

「うん、そしたら答、分かるんじゃないかな」

凛に……………
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